第2話 ぼくと世界とコーヒーと
ぼくとおもいでどろぼう
第2話 ぼくと世界とコーヒーと
ぼくはひとりで旅にでた たったひとりで旅にでた
ワクワクしちゃう大冒険っ
とにかく、ぼくはつきすすむ 前へ、前へとつきすすむ
ぼくと昔のぼくは、いっしょにうたいながら、前へと歩いた
まだまだ 知らないものがあった
まだまだ 見たことがないものがあった
知らない人がいて、知らない食べものがあって
まだまだ
まだまだ
まだまだワクワクはたくさんあった
すごい、すごい!
世界は 知らない であふれている!
たとえば、みんなの顔!
ぼくと似ている顔もあれば、似ていない顔もある
目の色も、顔の色も、かみの毛の色もちがう
でも、みんな生きているんだ
あとはね、あとはね
食べもの!
味がうすいものも、からいものも
たまに、まずいものも
ほんとうにほんとうに、知らないであふれているんだ
ほんとうにほんとうに
ちがうものであふれているんだ
ぼくと昔のぼくは
カフェとやらに入ってみた
ぼくたちは歩きつかれていた
あ、そうそう
言葉もちがっていたりする
だから、お店のひとに注文するのもたいへん
ぼくのひみつは、わからないときは
Yes!
と言うことだ
ちなみに Yes というのは
「はい」 とか 「うん」
と同じ意味らしい
ぼくは昔のぼくに、そこのことを言っていたから
「Yes!」
と、ぼくらはいっしょに言った
ちゃいろい飲みものがでてきた
ぼくたちは、のどがかわいていたから
いきおいよく飲んだ
とても苦かった
「うええええええ」
と、昔のぼく
ぼくも苦くかんじたから、
ぼくより小さい昔のぼくはもっと苦くかんじるだろう
「これ、すてる」
「これ、きらい〜」
昔のぼくがそう言うから、ぼくもいっしょに捨てようとした
そしたら、近くにすわっていたおばあさんが声をかけてきた
「こうすると、おいしくなるわよ」
そう言って、ミルクと さとう をくれた
ぼくたちは、じぶんたちでやろうとしてみたけど
やりかたがわからなかった
けっきょく、おばあさんにやってもらった
ぼくたちはコーヒーにミルクとさとうをいれたものを飲みながら
おばあさんのお話を聞いている
「コーヒーはね、たくさんのひとが
ここまで運んできてくれているのよ」
「そして、こうやって私たちが飲めるようになるの」
おばあさんのお話に、昔のぼくはしつもんをする
「あのひとだけじゃないの?」
と、コーヒーをわたしてくれたお店のひとを指さす
「じゃあ、ほかには誰がかかわってくれていると思う?」
と、おばあさん
昔のぼくは、よくわからずに、
頭をななめにした
ぼくはシンキングタイムがはじまった
ぼくは思いつくかぎりを口にだした
のうかさん、トラックのうんてんしゅ、トラック、お店のひと…
「そうだね、たくさんのひとやもの、時間が
このコーヒーをつくるのにかかわっているんだよ?」
と、おばあさん
「かかわっている?」
と、むかしのぼく
「たくさんのひとが、このコーヒーのために働いている、ということだよ、ぼうや」
と、おばあさんは言った
どうやら、たくさんのひとがコーヒーをぼくに届けてくれているらしい
うん、なんだかすごく、かんどうしているぞ
いろいろなひとがぼくのために、、、
このことを知って、ぼくは前にすすんだ気がした
一歩も歩いていなけれど、ぼくは前にすすんでいる
おばあさんにバイバイと言って、ぼくたちはカフェをでた
そして、ぼくたちはうたう
ぼくはひとりで旅にでた たったひとりで旅にでた
ワクワクしちゃう大冒険っ
とにかく、ぼくはつきすすむ 前へ、前へとつきすすむ
ぼくたちは広い世界に生きていて
言葉も、顔も、いろいろなものがちがうけれど
どこかで繋がっているらしい
そういえば、
「大切なことはね」
「今はもう目の前にいないひとたちのことを忘れないことよ」
おばあさんはバイバイするときに
ぼくたちにそんなことを言っていたな
ぼくとおもいでどろぼう
第2話 ぼくと世界とコーヒーと
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