名画『モナ・リザ』に“神の子羊”と“天使の翼”を見た経緯と考察 #10
#10 疑問
しかし、どうしてレオナルドは『モナ・リザ』のような絵を描いたのでしょう?
ネットで調べたところ、レオナルドは両性具有を究極の美としてとらえていたとする説があるようです。この説に従うならば、レオナルドは、『モナ・リザ』において男性と女性とを融合させることで、究極の美を描こうとしたことになります。
確かにそういう“究極の美”を追求してもよいのかもしれません。ですが、私には何か違うような気がしていました。
レオナルドは、研究者であり、探究者でもありました。一枚の絵を仕上げるためにありとあらゆることを調べまくっていたそうです。おそらくそうした飽くなき探究心こそが、彼のことを完璧主義者と言わしめた理由の一つになっていると思うのです。
つまり、レオナルドは、“究極の美”などといった現実離れしたものを描こうとしたのではなく、“人間の本質”を描こうとしていたのではないかと思うのです。そう、私たち人類、つまりホモ・サピエンス(Homo sapiens)の本質をです。
実は私には、『モナ・リザ』とは全く別のことで、以前から気になっていたことがあります。それは、男と女との性の境界は実はとてもあいまいなものであるということをある知人から聞いたことが発端となっています。
それは一体何を意味するのだろうと思い、私なりに調べたところ、“性スペクトラム”という考え方を提唱している日本人研究者がいました
(性スペクトラム 連続する表現型としての雌雄.http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/sexspectrum/outline.html)(図40参照)。
それは、生物の性別を、これまでのようにオスかメス、人間の場合は男性か女性という、二項対立式でとらえるのではなく、連続する表現型でとらえるべきとする考え方です。つまり、生物は、かならずしもオスかメスのどちらかに分けられるのではなく、その中間的な性質をもつ生物も存在するということなのです。例えば、メス寄りの性質を示すオスが存在したり、逆にオス寄りの性質を示すメスが存在するということなのです。オスの程度やメスの程度が個体によって少しずつ違っていてそれらが連続しているのだそうです。
私は、なぜこんなことが起きるのだろうと、とても不思議に思っていました。