シェア
許すこと、とやらのために僕は 長く伸ばしていた尻尾を切り落としたのだった 狩りのためでもなく 蝶々たちのためでもなく ひこばえにつるりと触れる その一瞬のためだけに 長く伸ばしていた尻尾だったが 正しさ、とやらの天秤の上では 一ミリの傾きさえも 産みやしなかった 切り落とされた尻尾は うんうんと唸っていたが 「自由だ」と告げると ころりと一つ転がり それきり、動かなくなった 顔を洗う 洗面所の鏡の中では 青ざめた男が瞬きをしている 髭をそり終えたなら、行かな
まばたきの間に世界は崩れ落ち 朝の食卓では珈琲が温くなってゆく 真っ白な器は私のために用意されたものか それとも世界を納めるために最初からあったのか 答えなどない、どこにも。 果てまで行った人が帰ることの無いように 存在しない事を知ることはできない いや 存在を証すものなど このつるりとした器以外に在りはしないのだ なあ 鳥たちよ お前の存在は確かであろうか 他者を撃ち落とすことは 真に願いの証なのであろうか 羽ばたくときにこの腕に抗う風は 命とどこが違うのだろうか