トンニャン最終章#1 大天使ウリエル
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ウリエルの巻」のような意。トンニャンシリーズ最終章の最初の話です。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
クリスタルの球形には、波に飲まれ苦しみながら流されている人間たちが映っている。決して映画やドラマなどではなく、現実の光景だ。
四大天使 ミカエル・ラファエル・ガブリエル・ウリエルらは、その球に映る光景を見つめていた。
いつのことだろう。遠く昔のこと。同じことがあった。やはり、洪水が起こり、ノアの一族以外は人類は滅んでしまい、ノアが現在の人類の祖となった。
何故だろう。あの時は姿こそ今と変わらぬものの、その洪水を当然の報いと受け止めていた。滅びるのは、人間のさがなのだと。全てはさだめであり、決められたことなのだと、当たり前に納得していた。
だが、今はどうだ。あれから長い時を愚かなる人間たちを見つめながら過ごした日々。それが、ウリエルの胸に突き刺さっていた。
どうして・・・
【大天使ウリエル】
光の天使ウリエルは、四大天使ミカエル・ラファエル・ガブリエル・ウリエルの一人。ウリエルとは、光り輝く者の意。しばしば人間界で人々を光で照らし導いたが、有名なのは、人間ヤコブと戦った天使はウリエルではないか、といわれていることだ。
そして、光・火をあやつる彼は、ソドムとゴモラの町を業火に包んで灰にしたともいわれている。
遠い昔から様々な伝説・神話が、洪水のことを語っている。
インドでは最高神ヴィシュヌがマツヤという魚となって、漁師に洪水が来るのを伝えて救ったとの話もある。
世界中の様々な土地での、様々な神々の伝説の中に、ほとんど洪水伝説があるのは、実際に洪水が起こったこと、そして、ノアが存在したことの証ではないだろうか。
「おい、あれは・・・」
ラファエルの声に、ほかの大天使たちも目を凝らす。
「あれは・・・その・・・・」
ラファエルは、黙って腕を組んで座っているミカエルを振り向いた。ミカエルは、何も見ていないのか、見ようとしていないのか、眼をつぶったまま何も語ろうとしない。
「おい、ウリエル。間違い、ないよな」
ウリエルは、今度はささやくように小さな声のラファエルの顔を見ながらうなずいた。そして、自身も小さくひそめた声で呟くように声を出す。
「クビドだ。それも、二人いる」
「・・・リオール・・・なの?」
初めてガブリエルが口をはさんだ。
「おそらく・・・」
ラファエルが、もう一度ミカエルを見ようと、首をまわす。
「知ってたの?ミカエル。知っていたのね?」
「ガブリエル、何を言ってるんだ。たとえ、クビドがミカエルの息子だといっても、こんなことミカエルが知っていて、許すはずがないだろう。まして、もうひとり、クビドにそっくりな天使が一緒にいるんだぞ。こんなこと・・・」
「リオールのことは知っていた」
ラファエルの言葉をさえぎるように、やっとミカエルも口を開いた。
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン最終章#1 大天使ウリエル
※トンニャンシリーズ、(前作との「間の話が未完成」のまま)最終章が始まりました。初めと終わりだけは最初に作ってしまっているので(プロローグとエピローグ。マガジン「トンニャン過去編」に収録)エピローグに向かってのお話となります。
【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
次回から「トンニャン最終章」#2 ウリエルへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/nc05587d76b61
トンニャン最終章、最初から読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/mb128933fa182