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トンニャン過去編#63 フェニックス(原題「フェニックス」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「ミセス・ボニーの巻」の次。「フェニックスの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです

やがて春の息吹が芽生える頃、最終試験に向けてセカンダリースクールは忙しくなった。あれほどしつこかったアリス・ジョージャスとピエール・オーギュスタンも、試験でそれどころではないようだ。
 
「人間の試験かぁ」
コーラには面倒な事だ。だが、たいして難しいとは思わない。
成績は常にトップクラス。それはトンニャンもチェリーも一緒だった。
この三人がいる時は、トンニャン・チェリー・コーラのトップスリーで争われた。今はチェリーがいない。トップはトンニャンかコーラだ。
だがコーラには、そんな事は何の価値もなく興味もない。どうでもいい事だ。
 
 
 
「コーラ」
呼ばれて振り返ると、そこには六枚の翼を持つ、ルシファーの姿があった。ルシファーの美しくきらめく瞳がコーラを見つめる。いつしかコーラの頬は涙で濡れていた。
ルシファーはコーラにゆっくりと近づき、そっと抱きしめた。そして濡れた唇に自分のそれを合わせると、じっと動かなくなった。コーラは抵抗せず、その身をまかせていた。
しばらくすると、ルシファーは唇を離した。
「その死の瞬間まで、わたしを愛すると誓うか?」
コーラは泣きながら、それでもはっきりと
「はい」
と答えた。安心したように、ルシファーが再びコーラを胸に抱く。

「リリスがある限り、正妻には出来ない」
「・・・わかっております。私など・・・」
コーラはそのままルシファーの腕の中で泣きじゃくった。
「すまない・・・」
ルシファーはまた、コーラに口付けた。
「魔界に帰ってきてくれるね?わたしのそばにいてほしい。一緒に暮らしてほしい」
コーラは心の中で、何度も何度も「はい」と返事をしたが、言葉にはならなかった。
 
 ***
 
「トンニャン、コーラは行ってしまったのかい?」
トムが学校で、トンニャンに声をかけた。
「もう、会えないのかな?」
コーラが魔界に帰った次の日、転校した事を聞きつけたのだ。
「大丈夫。もう一度会えるわ」
「また、来るんだね?」
トンニャンが歩きながらうなずく。
 
「今の魔界は、コーラには冷たいでしょうから」
トムが不思議そうにトンニャンを覗き込む。
「どういう意味?コーラは何か、へまをやったのかい?」
「へま・・・というか。愛する人を間違えたのか?いや・・・生まれる所を間違えたのかしら?」
トムには何のことかわからなかった。だが、何かコーラが困っているらしい事だけ感じとれた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#63 フェニックス(原題「フェニックス」)

※このルシファーとコーラの生活、一年間が、後にリリスが怒りに任せて「女と一年も暮らして何も無かったなんて・・・」に続いていくわけです。
魔女裁判長リリス、そのシーンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n3dc47a12c097?magazine_key=mf04f309d9dfc

【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
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次回トンニャン過去編#64 フェニックスへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n49ec45b7bc05

前回トンニャン過去編#62 フェニックスはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n582b393db727

■トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

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