元祖 巴の龍#13
歳の頃は十いくつになろうか、少年が大人を相手に素手で戦っている。
見たこともない動き、見たこともない技。菊之介はその戦いに釘付けになっていた。
「あんな幼い子に、大人が出てくるとは卑怯ではないか」
大悟も身を乗り出して見入ると、少年が飛び上がり回転しながら後ろ向きで蹴りを入れた。
すると相手は、その衝撃で吹き飛び気を失って倒れた。
見ていた者たちが拍手して、何人かの人が金を包んで投げた。
少年は手持ちの帽子にお金を受け取り
「謝謝(しぇしぇ)」
と何度も頭を下げていた。
最後まで見ていた菊之介は、思い切って少年に話しかけてみた。
「あの、今の技は何というものですか」
少年はちょっと首をかしげてから、ひとこと言った。
「拳法(カンフー)」
それから、気を失っている男に喝を入れると帰ろうとした。
「ちょっと待ってください。太刀を待たずに戦える。人を殺すこともない技。カンフーをわたしに教えてください」
菊之介が頭を下げると、今度は大悟もあきれた。
この弟に驚かされどうしだが、太刀を持たずに戦い、人を殺すこともない技なんて。優しすぎるにもほどがある。
これが武人の言う言葉か。
少年は菊之介を見ると
「カンフー、甘くない」
と言い、再び帰ろうとした。
「あ、待って!待ってください」
追おうとする菊之介の体を大悟が抑えた。
「兄上、何をされる」
「何をと言いたいのはこっちだ。
こんなことにかまけているより、太刀の腕をあげることでも考えたらどうだ」
大悟は腕に力を込めて、菊之介を抑えつけた。
菊之介と大悟は村はずれの小屋のような家の前に来ていた。あまりにみすぼらしいこの小屋は、かつての大悟の家に似ていた。
続く
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そして、またどこかの時代で
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