カオル #2
カオルがやって来たばかりの頃、
カオルの前では ついドギマギしたり、
しどろもどろになったり、
頭で男とわかっていながら
なかなか すぐには信じられなかった。
洗面所で、偶然風呂上りの
カオルの裸を見る機会があったとしても、
その体が どう見ても自分と同じ構造であることを
目の当たりにしても、
それでもカオルの顔を見ると
どうしても男とは認識できなかった。
おかげで受験は散々だった。
第一志望の高校を落ちて、
すでに第二志望の高校も落ちていたので
結局第三志望の共学の高校が、
今 晃二が通っている学校だ。
いや、受験の失敗をカオルのせいにするまい。
むしろ、それが晃二の実力だったのだろう。
「カオル、この間 その格好で
外に出ただろう。」
カオルは うなずきながら指にマニキュアを
塗っている。
「となりのおばさん 言ってたぜ。
『カオルさんのお姉さん、カオルさんにそっくりねえ。
どちらにお勤め?それとも もうお嫁さんかしら?』
って。」
カオルは鼻歌を歌いながら、答える様子はない。
「だいたいその格好はどうしたわけ?
なんで急に女装したがるようになったんだよ。」
カオルは塗り終わった指を目の高さに上げて、
フーフー吹いている。
「雄三さんがね、男にしておくの もったいないって。
だから、ちょっと口紅引いてみたの。
そしたら、いい女が鏡に映ってたの。」
そりゃあカオルは、そんじょそこらの女に比べたら
よっぽどきれいだけど・・・。
いやいや、今はそんなことを言ってるんじゃない。
「あのさ、いつも杉原さんって言ってるのに、
いつから雄三さんになったんだよ。」
杉原雄三は晃二の父親の名前だ。
「とにかく、俺の前で その話し方はやめろ。」
晃二が強いもの言いに、カオルは初めて晃二の目を見た。
晃二はドキリとして、この心臓の鼓動が
カオルに聞こえたらどうしようかと思った。
ありがとうございました(≧▽≦)
カオル ♯3に続く
カオル#2
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かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
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