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元祖 巴の龍#4
「ちりぢりに吹っ飛んだと母が言ったのか」
丈之介はうなずいた。
大悟は自分の右腕をあらためて見た。今は消えてしまった龍の紋章。
その光で消え去った岸涯小僧。母の体験した光の三つ首の龍。
それはまだ大悟の生まれる前とはいえ、とてもよく似ている話に思えた。
「だが、もう十七年も昔のことだ」
丈之介は自分の言葉で失った長男を思い出した。
生きていれば十六歳。丈丸(じょうまる)と呼ばれていたが、今はなんと・・・。
いや、生きているはずがない。
こうして丈之介と大悟が生きていることすら、奇跡のようなものだから。
「梗丸(きょうまる)、拾い物をしたそうだな」
すぐ近くの山小屋に住む芹乃(せりの)が顔を出した。
「おい、その梗丸ってのはよせ。俺は大悟と名を改めたのだぞ」
大悟と芹乃は幼なじみだ。やはり先のいくさで両親を失って、この山に祖父の源じいと供に住んでいる。源じいは腕の良い刀鍛冶だった。
今は刀を打つことはほとんどなく、この山で孫娘の芹乃の成長だけを楽しみに生きている。
「それに拾い物とはこの姫御に失礼ではないか」
「ほう、拾い物は女か」
芹乃は上がり込んで菊葉をじろじろと見た。
丈之介は芹乃の来訪で、菊葉が桔梗にそっくりであることを大悟に言う機会を失ってしまった。
「おい、やめろよ」
大悟が芹乃の腕をつかんだ。芹乃は眠っている菊葉の頬を指でつついている。
「いいではないか。生きているかどうか確かめようと・・・」
菊葉が体を反転させて顔をゆがめた。大悟と芹乃は思わず手を握り合って、そっと覗き込んだ。
「きゃっ!」
続く
ありがとうございましたm(__)m
元祖 巴の龍#4
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そして、またどこかの時代で
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