元祖 巴の龍(ともえのりゅう)#21
菊之介一行の甘露への道筋は、まさに戦いの連続だった。
山を歩いても森を歩いても、待ってましたとばかりに妖怪や人間の追手が襲ってきた。
それでもロンのカンフー、大悟の弓、菊之介のカンフー交じりの太刀捌きで、なんとか切り抜け、西へ西へと進んだ。
森をぬければ甘露、というところまで来て大木に身を寄せると、もう甘露の町が見えた。
「甘露だ」
ロンが顔を紅潮させた。
初めての見知らぬ町に期待と不安が入り混じったような表情だ。
菊之介も大悟も町の方を眺めた。
その時だった。
突然菊之介の胸と、大悟の右腕が光り始めた。
大悟はすかさず菊之介の着物の衿を開いた。
そこにはやはり大悟と同じ、片足を顔の前に突き出した龍の紋章が刻まれていた。
さらに、菊之介の鍔と大悟の太刀がカタカタと震えた。ロンは眩しさで目が開けられなくなり、両手で顔を隠した。
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甘露を無事通り抜けた兵衛たち三人は、粛清(しゅくせい)に向かうべく道を急いでいた。森に入った時、突然兵衛の背中が光りだした。
洸綱が兵衛の衿を後ろに引っ張ると、背中にくっきりと龍の紋章が現れた。龍は髭を蓄え、横顔で長い爪の前足を、顔の前に突き出している。
そしてさらに、兵衛の懐の太刀の柄が震えだした。
それは先のいくさで洸綱の妹・桔梗が使っていた太刀の柄で、幼い兵衛、葵を連れて逃げる途中に柄のみ拾ったものだった。
しばらく光の龍は輝き、やがて消えていった。それと同時に柄の震えも止まった。
「今のは、何だったのでしょう」
最初に口を開いたのは葵だった。
もとより、洸綱・兵衛にとっても初めての出来事だった。
兵衛は母の形見の柄を改めて手にし、強く握りしめた。
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「今の光、何?」
ロンがおそるおそる目を開いた。
菊之介も驚いていた。
大悟にとっては二度目だが、菊之介は以前胸が光った時にすぐ気を失ってしまったので、よく覚えていなかった。
大悟は、かつて初めて菊之介と出遭った時にこの光に助けられたこと、また父・丈之介が言っていた母・桔梗の体験、まだ両親が夫婦ではない頃三つ首の光の龍に助けられたことを話した。
「しかし敵に襲われたわけでもないのに、なぜ龍の紋章は現れたのでしょう。それに鍔と太刀まで呼応するとは」
続く
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そして、またどこかの時代で
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