元祖 巴の龍#22(地図付き)
「しかし敵に襲われたわけでもないのに、なぜ龍の紋章は現れたのでしょう。それに鍔と太刀まで呼応するとは」
もちろん大悟にもそんなことがわかるはずがなかった。
また、彼らから、一里も離れていないところに、兄・兵衛がいるなどと知る由もなかった。
そして、兵衛・大悟・菊之介の三兄弟は、お互いの存在に気付くことなく離れていくのであった。
甘露は新城とほぼ大きさを同じくする城下町だった。
渡来人の村・サライに近いせいか物の流通が盛んで商人たちも数多く店を出していた。
菊之介達はとりあえず甘露にしばらく滞在し、旅の路銀を手に入れようと考えた。
ロンはまたカンフーを見せようと考えたが、菊之介はもう一歩先のやり方を思いついた。
それはロンの相手を客の中から募り、ロンとその客とどちらが勝つか、賭けをさせることだった。
人の多いこの町で、この博打は大当たりした。菊之介は瞬く間に路銀を調達したのだ。
甘露での滞在は思いのほか短く、菊之介達はさらに西の来良に向かった。
海に面した来良はサライのように外に向いている町だった。
船の出入りもあり、渡来人も多く見かけた。
ここで伯父・涼原洸綱を探さなければならない。
しかも三つ口の手の者に隠れてだ。
菊之介達は町はずれに壊れかけた小屋を見つけた。
大悟とロンは器用に小屋を直して住めるようにした。
菊之介は早速伯父を探すため、情報収集を始めた。
伯父が生きているとすれば、きっと目立たないように隠れているに違いない。長くなりそうだ、と菊之介は思った。
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さて甘露(かんろ)より南東に位置する粛清(しゅくせい)は、樹林川を越えてさらに南下しなければならなかった。
三つ口定継の居城がある蛇骨(だこつ)は、さらに南に位置していた。
しかし、定継自身が新城を本拠地にしてから十五年がたち、蛇骨の近くにありながら三つ口の支配が手薄になりつつあった。
「丈おじ、今日はちょっとばかりごちそうだぞ」
かまどを吹きながら芹乃が言った。
丈之介と芹乃は、あの風狸に襲われた日から逃げ続け、西燕山を越えてこの粛清にまでやってきた。
姪と暮らす伯父、ということにして太刀の鍔の細工などして暮らしを立てていた。
芹乃は時々町の市で物売りの手伝いをしながら、少しずつ源じいを失くした悲しみを忘れようとしていた。
あの日以来大悟の消息は知れず、いっしょにいた美しい娘・菊葉も生きているかすらわからない。
口にこそ出さないが、父親の丈之介はどんな気持ちでいるのだろう。
それを思うと胸の締め付けられる芹乃だった。
続く
ありがとうございましたm(__)m
地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)
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そして、またどこかの時代で
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