元祖 巴の龍#39(地図付)
菊之介はすぐに振り向いて、桔梗の石牢を見た。錠前が開き、扉が開いている。大悟は扉に駆け寄り、中を覗いた。
「おらんぞ、菊之介」
桔梗が消えた。菊之介はゆっくりと後ろを振り返った。そこには、桔梗を片手に抱きかかえた三つ口定継が立っていた。
「菊葉!いや、菊之介。育てた恩を忘れおって」
「ち・・・義父上、わたしは逃げたくなんかなかった。新城での生活は楽しかった。
しかし、あなたはわたしの命を狙ってくる。母上をこんな酷いところに閉じ込める。逃げるしかないではありませんか」
定継は声をあげて笑った。
「わしを欺き、わしに逆らう者を何故許せるのじゃ。
この桔梗は十三年間に渡ってわしをたばかりおった。
この期に及んでまだ丈之介を忘れておらん。菊之介おまえもじゃ。
桐紗同様可愛がってやったものを。おまえのために桐紗までわしを」
定継は口惜しそうに唇を噛んだ。
「蛇骨(だこつ)にくるのじゃ。桔梗を助けたくば蛇骨に来い。わしは蛇骨で待っておるぞ」
定継は高笑いをしながら、桔梗とともに闇夜に消えていった。呆然と立ち尽くす菊之介に、大悟が近づいてきた。
「新城では楽しかったのか」
「兄上」
「いいや、責めているのでない。子供であれば可愛がってくれる者を悪く思えまい。良いのだ」
大悟は三つ口定継の消えたところを見つめながら、強く言い放った。
「蛇骨へいかねばのう。母上を助けにいかねばならぬ」
一夜明けて、菊之介と大悟は山のすそ野にいた。
大悟はいますぐ蛇骨へ行くことを強く主張した。しかし、菊之介の考えは違っていた。
「兄上、粛清(しゅくせい)に行きましょう」
「粛清?また、なぜだ」
「ここから蛇骨に行くには南の朱欄を抜けるのが一番近い」
大悟もうなずいた。
続く
ありがとうございましたm(__)m
地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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