元祖 巴の龍(ともえのりゅう)#76
芹乃と大悟を見送って、菊之介と桐紗は大きな木の根に座っていた。
「菊之介、大悟様にあのようなことを申したけれど、ご自分も今夜、決心されましたか」
「な・・・何を申される。何の事やらわかりませぬ」
菊之介は、今まで何度こうして桐紗と過ごしただろう、と考えていた。
大悟には奥手だ、などと言ったが菊之介も人のことは言えない。
肩を抱くこと以外は、どうしてもできないでいる。
一つ年上の桐紗には、それが物足りないのだろうが、それがわかっていても、なかなかそれ以上のことは出来ないでいた。
「兵衛様は十七で祝言を挙げられたのですよね。今の大悟様も十七なのですよね」
桐紗がぶつぶつ言っている。
「わたしはまだ十五です」
菊之介が強く言うと
「でも、葵様は十六で祝言を挙げられたのですよ。私は十六。年に不足はないでしょう。菊之介は先ほど、大悟様にそう申しておりましたよね」
と桐紗は巻き返す。
「菊之介、やはり私が三つ口定継の娘だからではないのですか。
義母上が、十三年もの間、父と夫婦でありながら、決して心を許さず、丈之介様を忘れなかったように、結局私にも心を許してはくれないのですね」
「それは違います、義姉上。私の気持ちは、もうとっくにご存じでしょう」
菊之介は珍しく声を荒げて言った。
「三つ口の義父と母上のことと、わたしと義姉上のことは、全く違います」
「では何故、こんなに近くにいるのに、菊之介は一度も・・・」
「義姉上、やめてください。義姉上の口からそんなことは聞きたくありません」
桐紗は唇を噛んだ。それから涙を浮かべると立ち上がった。
しかし菊之介は、無理やり引き留めると、桐紗を座らせた。
「もう、いなくなるのはやめてください。この前、かなりこたえましたから」
さらに菊之介は、桐紗の肩をしっかりと抱きとめた。
「わたしを信じてください。義姉上以外の女性に心を移したことなど、一度もありません」
桐紗はこの奥手な男に抱かれながら、また涙ぐむのであった。
続く
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