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トンニャン過去編#79 ピエール・オーギュスタン(原題「ファイヤーバード」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「アリスの巻」の次。「ピエールの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

その日チェリーは、ヘスターに相談された事もあり、ニコラスと話してみようと思った。
「ニコラス・ボニファキウスね?」
呼び止められてニコラスはニッと笑った。
「チェリー・エンジェル。来ると思ったよ」
チェリーには、何故この少年が自分の名を知っているのか、わからなかった。だが、もしトンニャンが言うように、彼が何かにとりつかれているとしたら、それが彼に言わせているとしたら、チェリーを知っていても、不思議はないかもしれない。
 
「コーラの事、好きなの?」
思い切って、単刀直入に切り出してみた。
「あぁ、好きだよ。コーラが生まれた時からね」
ニコラスがまた、ニッと笑った。
「生まれた時って・・・」
チェリーは戸惑いで言葉がない。
「可愛かったなぁ。はねっかえりのくせに妙に優しくて。ちっとも魔女らしくなくて」
ニコラスは微笑んで、遠い目をしている。
 
「あなたは誰?」
チェリーは、ニコラスの顔色を伺うように、恐る恐る聞いてみる。
「まだ、わからない?ケルビム(智天使)に昇進したっていうのに」
チェリーの心臓は凍りつきそうだ。彼はチェリーの正体を知っている。そして、彼の正体がわからないチェリーを、憐れんでいるようにさえ見える。
突然ニコラスはチェリーに顔を近づけると、チェリーの額を指でつついた。
「ふふっ。可愛いね、きみって」
仮にもチェリーは六年生。五年のニコラスの一級上の先輩にあたる。チェリーはムッとした顔で、不愉快そうに口をつぐんだ。
 
「怒ったの?あ、そうか。ここでは僕の方が年下なんだ。後輩に馬鹿にされてるみたいに感じた?」
「ちょっと、ニコラス。失礼じゃないの?」
チェリーが声を上げると、ニコラスの眼がギラリと光った。そしてその顔からは微笑が消え、冷たい眼がチェリーを貫いた。
「チェリー、僕の事が知りたかったら、トンニャンに聞けばいい」
ニコラスはくるりと向きを変え、そのまま去っていった。
残されたチェリーは、じっとりと脂汗で濡れた額をハンカチで押さえながら、気を失いそうな思いに耐えていた。
 
 
 
「チェリー、私に話があるんじゃなくって?」
学校が終わり、マンションに戻ると、昨日よりさらにコーラの機嫌が悪くなっていた。
「今日、ヘスター・カエサルに呼び止められたわ。チェリー、彼女に頼まれたんでしょ。私の気持ちを聞いて欲しいって。」
そうだった。肝心の事をしていなかった。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#79 ピエール・オーギュスタン(原題「ファイヤーバード」)

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

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次回トンニャン過去編#80 ピエール・オーギュスタンへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n481fb683030c

前回トンニャン過去編#78 ピエール・オーギュスタンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n685082e6d580

■トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

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