Love's night #16
四年前、夜の公園の噴水の前に、赤ん坊を抱いた少年が座っていた。
薄汚れた服、生気のない目、赤ん坊は生きているのか死んでいるのか、
身動きもせず やせ細っていた。
少年は何日も食事を摂っていなかった。
つまり、赤ん坊も何日もミルクを飲んでいないことになる。
少年の体が ふ~~っと風に浮いたような気がした。
俺は死ぬのか・・・
少年がそう思った時、意識が遠のいていった。
次に少年が目覚めた時、彼は病院のベッドに寝かされていた。
「天国?」
ぼんやりと目を開けて、少年は言った。周りは真っ白だった。
「ここは病院よ。天国じゃないわ」
それは女性の看護師の声だった。
思わず起き上がろうとして、体のふらつきを覚え、再びベッドに倒れこんだ。
「あら、あら、まだ無理しちゃダメよ。栄養失調なんだから」
看護師は
「赤ちゃんなら無事よ。もうちょっと遅かったら 危なかったって。
でも今は ミルクも飲むようになったわ。あなた、三日も眠ってたのよ。
早く口から食べるようにならないと。赤ちゃんに負けちゃうわよ」
と言うと、
「あ、比留川さん」
と言って 振り返った。
「比留川さんが、あなたたちをこの病院に運んでくれたのよ。
よく、お礼を言いなさいね」
そう言うと、看護師は 比留川という男に軽く会釈して出て行った。
比留川は、ベッドの横にある椅子に座ると 少年を見つめた。
「俺は 比留川貢(ひるかわみつぐ)。キミは?」
少年は戸惑いながら答えた。
「沓澤(ふみさわ)・・・勢(せい)・・・です。」
それが 勢と 比留川の出会いだった。
ありがとうございましたm(__)m
Love's night #16
最新作「駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
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