トンニャン過去編#39 ルーシー・エイビス(原題「天使チェリー」)
※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。話の位置は「エミリーパスト」次。「ルーシーの巻」のような意です。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
「・・・トンニャン、座って。お茶、何がいいかしら?」
エレンに手を引かれて、トンニャンはエレンの部屋のソファーに座る。
「ハーブティーある?」
「えぇ、何でも揃ってるわ」
「じゃあ、ラベンダー」
エレンは微笑むと、すぐ給仕にラベンダーティーを持って来るよう、頼んだ。
「エレン。ピース財団は、ついこの間までは小さな会社だったのよね?」
トンニャンがラベンダーティーを口にしながら、エレンを見つめる。
「そうよ。小さい時は、貧しかったと言っても良いくらい。父と母で、小さな会社を立ち上げて、いつも赤字で・・・。でも、楽しかったわ、三人一緒だった時が」
遠い目をしてエレンが笑みを浮かべる。
「それが急成長?」
「そう、確か、私が十歳くらいの時、父が開発していたものが認められたの。それがきっかけかな?まさか、こんなに大きな屋敷に住めるなんて、思ってもいなかったのよ」
「エレンは一人っ子よね?」
「えぇ、貧しかった時が長かったから、子供をもう一人持つなんて、考えられなかったんじゃない。今は、父も母も忙しくて、いつも家にいないし。今から子供も、ないでしょうね」
「ルーシー、少し休まないと。横になった方がいいわ」
ルーシーは椅子に座ったまま、ただじっとしてる。葬儀から帰ってから、食べ物どころか、水すら口にしていないのだ。
「ルーシー。お願い。何か言って。どうしても食べられないなら、今日は食べなくてもいいわ。でも、せめて少しでも何か飲んで、そして眠らなきゃ」
チェリーがどんなに声をかけても、ルーシーは返事をしなかった。
朝の日差しで、チェリーは目を覚ました。いつのまにか、チェリーも椅子に座ったまま眠っていたらしい。
「ルーシー!?」
ルーシーがいない。
チェリーは、ルーシーのアパートを飛び出した。行く所は一つしかなかった。
ルーシーは、母が埋められた墓地に来ていた。
母が最後に言った言葉。ルーシーには、未だに信じられないことだ。
いや、信じる必要などない。ルーシーには、自分を愛してくれた両親がいた。それで充分だ。そして、二人ともいなくなった。だから、もう、生きる意味など・・・。
「ルーシー!!」
後ろからチェリーが、ルーシーに飛びついた。ルーシーは、今まさに、カミソリで、手首を切ろうとしていたのだ。
少しのもみ合いがあり、チェリーはルーシーからやっとの思いで、カミソリを奪い取った。
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン過去編#39 ルーシー・エイビス(原題「天使チェリー」)
※トンニャンシリーズ、「魔女裁判長リリス」の次は、書籍「炎の巫女/
阿修羅王」の「阿修羅王(全6話)」の前編3話「力の神インドラ」「猿神ハヌマーン」「シッタルタ」と続きます。もしもnoteに発表すれば、1話が5回、3週分となります。続きを3週分、空けて。そしてその間、トンニャン過去編を続けて発表します。
【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024
次回トンニャン過去編#40 ルーシー・エイビスへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/nf067a79f55ea
前回トンニャン過去編#38 ルーシー・エイビスこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n3546e1f96578
トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d
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