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元祖 巴の龍#32(相関図付)
菊之介の声はかすれている。この一年のうちに声変わりもはじまり、すでに男であることは、誤魔化しようもなかった。
「驚きました。あなたが本当の妹ではないと知った時は。まして男だと聞かされた時は」
桐紗は目を伏せた。
「これで幼き頃よりの私のあなたへの気持ちも、決しておかしなものではないとわかり、安堵すらしたのです」
「え・・・義姉上、今なんと」
桐紗は頬を染めて小さく首を振った。
「いえ、良いのです、菊之介」
「義姉上、どうしてわたしが名を変えたことを知っているのですか」
菊之介は桐紗を見つめた。
「そんなに私を見つめないでください。それに義姉上というのもやめてほしいのです。名前で・・・」
桐紗は恥ずかしそうにうつむいた。
「あの、どうも話が・・・。わたしは母上を助けに来たのです。
わたしは義姉上の父君に命を狙われています。
わたしを逃がした母上の身が案ぜられて、こうして探しに来たのです」
「わかっております。いつか菊之介が帰ってくると信じて待っておりました。
義母上(ははうえ)は・・・残念ですが囚われています。
わたしも父に話したのですが、聞き入れてはもらえあませんでした。
しかし、生まれ落ちてすぐ、実母を失くした私は、義母上は実母同然。
何とかお助けしたかった」
「死・・・死んだのですか」
「いいえ、死んではおりませぬ。義母上は南東の安寧(あんねい)に監禁されているようです」
安寧。
ここにはもういない。菊之介は落胆の色を見せた。
だがすぐに、生きているのだからと思い直した。そして、桐紗を再び見つめた。
「義姉上、ありがとうございます。
おかげで無駄に危険を犯さずに、安寧に行くことができます。
あの・・・わたしのことを許してくださるのですか。わたしが義姉上をだましていたことを」
桐紗は微笑みをうかべた。
続く
ありがとうございましたm(__)m
※相関図、写真が下手で、曲がってて、すみません。2001年作成。
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「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
次回 元祖 巴の龍#33はこちらから
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前回 元祖 巴の龍#31はこちらから
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