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巴の龍(ともえのりゅう)#18
「菊葉(きくは)太刀を抜くのだ!」
丈之介(じょうのすけ)が叫んだ。
菊葉が言われるままに太刀を抜くと、
まばゆいばかりに輝く太刀が
菊葉を導くように黒龍に向かってゆく。
菊葉は飛びあがって、
黒龍の頭から斬りつけた。
グザリと入った切っ先は
龍の全身にズブリと入り、
それは尾の先まで真っ二つに切り裂いた。
黒龍の宙に浮いていた身体が、
グラリと揺れて回転するようにして落ちてきた。
菊葉は 口から泡を吹いている黒龍に近づいた。
「母上は・・・母上は、ご無事なのか?」
黒龍はかすかに口を動かした。
「新城(しんじょう)には・・・も・・・う・・・おら・・・ん・・・。」
そう言うと黒龍はこと切れた。
黒龍の命が途切れると、雷雨はやみ暗雲は去り、
青空が見えてきた。
丈之介は兵衛(ひょうえ)に歩み寄った。
「わしは草薙丈之介(くさなぎじょうのすけ)おまえの名は?」
兵衛は驚いて目を丸くした。
「ち・・・父上、俺は涼原兵衛(すずはらひょうえ)。
叔父洸綱(たけつな)に育てられました」
「でも、逃げだしてきたんだよね~~」
葵(あおい)がひょいと顔を出した。
余計なことを・・・
と兵衛が言う前に、葵は丈之介の目の前に立ち、
「はじめまして。私は洸綱の娘・葵です。
桔梗叔母上によく似ていると、父からいつも言われてました。
兵衛のいいなづけ です」
と言うと、いきなり兵衛に抱きついた。
巴の龍#18
ありがとうございます( ^^) _旦~~
最新作「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
巴の龍#19へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n2205ea2937f6
巴の龍#1 最初から こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n6785ce9c010e
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