元祖 巴の龍#28
「ロン、どこにいる。ロン、返事をしてくれ」
菊之介は再びロンを呼んだ。
「ロンというのは、こいつのことか」
後ろで聞きなれない声がした。
振り返ると男が数人立っていて、一人が抱えていたものを、菊之介の方へ投げてよこした。
菊之介が駆け寄ると、やはり血にまみれたロンの姿があった。
「ロン!ロン!」
菊之介が揺り動かしたが、ロンはすでに事切れていた。
「こやつてこずらせおって。母親の死体を見たら半狂乱になりおって。
見たこともない技で攻撃してくるものだから、皆で滅多斬りにしてやったわ」
男たちは高笑いでそう言った。それから
「おまえ、菊葉だな。三つ口の殿より殺せと命ぜられて、ほうぼう探したわ。やっと見つけてみれば、来良に行ったというし。ついでにこいつらでも殺さねば、腹の虫がおさまらぬわ」
と言い、
また別の者が
「だがちょうど良いところに帰って来たものだ。おぬしも運のないやつよのう」
と言った。
菊之介はロンを抱きしめたまま、動かなくなった。
「ほう、こやつ、もう戦意を失のうでおるわ。まぁ、女として育てられたのであれば、戦うこともできまいて」
そして、また皆で大声で笑った。
菊之介はゆっくりと顔を上げた。
大悟は港でなにがしかの金を手に入れると、それで櫛を買った。
かつてロンの家に世話になっていた時も、時々ロンの母親に何か買っていたが、その都度心から喜んでくれた。
食べてゆくのが精一杯の生活で、人から何かをもらうことなどなかったのだろう。
今度もきっと喜んでくれるに違いない、と思うと大悟の気持ちも少しはずんできた。
大悟はロンの母親が好きな山鳥を売らずに取っておいた。
それらの土産物を持ってロンの家に急いだ。
早くロンの母親に会いたかった。
続く
ありがとうございましたm(__)m
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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