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エンドレスヒールⅡ-3.11 #6あさみの場合
「解からない時は、そのままにしないで声かけてね。間違って並べると、後で本を探す時にどこにあるか、わからなくなるから。」
「はい。」
唯野さんは、震災当日仕事だったのだろうか。
浅海の脳裏に、ふと疑問がかすめた。
この被害のあった建物の中で、どうやって お客様を逃がしたのだろう。
非難訓練は、普通の企業ではやることが義務付けられているけれど、N市だし、市も必ず やってるはずよね。
「唯野さん、震災当日は仕事だったんですか?」
「そうよ。」
「じゃあ、ここで、この図書館で被災したんですか?」
「そう。」
「あの・・・どんな感じで・・・。」
「どんなって・・・。」
唯野はちよっと首をかしげたが、声の調子も変えずたんたんと語り始めた。
「地震が起こった時はね、お客様に書棚から離れてもらって、カウンターの前の一番広い所に集まってもらったの。みんな冷静だったように思うわ。」
「長かったですよね。」
「そうね。でも、動けないし。最初の地震がおさまるまでは動けなかったわ。」
「その後、逃げたんですか?」
「そう。」
「非常階段で?」
「今、考えると非常階段じゃなくちゃいけなかったのよね。でも。」
でも?
「でも、止まったエスカレーターが一番近くて下の出口にも近かったから、止まったエスカレーターを降りたわ。」
エスカレーター?
「そう、危なかったかもしれないわよね。非常階段から誘導した人もいたみたい。けっこう、混んでいたの。」
「慌てたりしなかったんですか?」
「意外とね。皆さん、慌てずに降りたの。」
2011年6月6日(月)
続く
エンドレスヒールⅡ-3.11 #6あさみの場合
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
次回 エンドレスヒールⅡ #7はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n347c495a63d0
前回 エンドレスヒールⅡ #5は こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n47e45e25f166
②エンドレスヒールⅡ あさみの場合 最初からはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n799a32079029
①エンドレスヒールⅠ 和美の場合 を最初から、まとめて読めるマガジンは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/m3589ceb09921
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