エンドレスヒールⅡ-3.11 #11あさみの場合
桃井からの電話を切ってからも、資格を生かして仕事探す気持ちに変わりは無かった。
しかし、桃井からの電話は、桃井からの言葉は嬉しかった。
桃井の心に答えたかった。しかも、桃井は8月末には図書館の仕事は終わると言う。
「会いたい。」
すっかり太って、かつての見る影もない浅海だった。
実際、桃井と仕事していた頃から10キロ以上太ってしまった。
10年で10キロ。体に悪いことは解かっていても、ダイエットはいつも失敗だった。
桃井が仕事を辞める数日前、浅海は桃井のアドバイスにしたがって、もう一度N市に履歴書を入れた。
そして、その足で桃井の職場、図書館に向かった。
仕事を辞めてから来ていなかった、まさに10年ぶりだった。
カウンターにいる桃井を認めると 少し近づいて 回りをのお客様を気にしながら 桃井に視線を向けた。
桃井は少し驚き そして微笑んだ。
すいてる時を狙って近づくと話しかけて来た。
「私、今日もうすこしで上がるんだけど、時間ある?」
「あ・・・あるよ。」
何も考えていなかった浅海だったが、誘われて思いついた。
「桃井さんが時間取れるなら、夕食も大丈夫よ。」
話はすぐに決まった。
図書館の近くのファミリーレストランで待ち合わせをした。
あれから10年。
かつて子供の食事に重きをおいていた浅海は、長男・次男が就職し、三男だけ大学。
夫は、メールで「今日、食事してくるから、食べてきて。」と知らせれば、文句も言わなくなっていた。
片や桃井も、当時中学生だった子供が他県に就職し、夫は単身赴任のため 一人だった。
浅海と桃井は10年ぶりで、食事をした。
2011年6月11日(土)
続く
エンドレスヒールⅡ-3.11 #11あさみの場合
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
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