元祖 巴の龍#64
「それにても、伯父上はかたくなすぎるのではないか」
大悟も洸綱の態度に、ひどすぎるのではないかと感じていた。
「あの方は昔からそういう方なのだ」
丈之介はぽつりと言った。
「親父、俺は母上に対する物言いも不愉快だ。
昼間は初対面だったし、菊之介が食ってかかるのを止めたが、実のところは俺も菊之介と同じ思いだった。
それに桐紗殿にしても、あれほど熱があるのに、家に置いておけぬとは、了見が狭すぎる」
「大悟、言いすぎだ。あの方は涼原の殿様で、我らは家来。
我が主筋の方に、何を言われても何をされても、我らは従うのみだ」
「主筋って、俺はあの伯父御の家来になったつもりはないぞ」
「おまえがなくとも、兵衛が葵殿の婿になった以上、兵衛が涼原の跡取りだ。
弟として兵衛を支えていくのが、本来の姿ではないか。
北燕山で、何も知らずに暮らしていた時とは違う。
こうして洸綱様と再び相まみえた以上、長年涼原家に仕えて来た草薙の跡取りとして、大悟、おまえが兵衛を支えていくのだ」
大悟は戸惑いを隠せなかった。今まで一度たりとも、家のことや、跡取りの話など口にしたことのない父だった。
それが伯父や兄と再会した途端、すっかり家来に戻ってしまった。
これなら山に隠れていた方がましだったのでないか。
と、そこまで思って、かつて父母と兵衛・大悟が静かに暮らしていた時も、あの伯父に見つけ出され、先のいくさで身内がバラバラになったことを思い出した。
「なんという自分勝手な奴だ。涼原の家のことしか考えておらん。
兄上はあんな人に育てられたのか」
大悟が憤慨していると、桐紗を寝かせた部屋から芹乃が出て来た。
「芹乃、様子はどうだ」
「かなり熱が高い。菊之介様はずっとついておられるというが、私も時々のぞいてみよう」
「すまぬ、芹乃。
久しぶりで積もる話もしたいのだが、次から次といろいろなことが起こって。
我らのことは、芹乃には無縁のことなのに」
芹乃は首を振った
続く
ありがとうございましたm(__)m
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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