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トンニャン最終章#7 ルキフェル第三軍団大将サルガタナス

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
話の位置は「ウリエルの巻」の次、「サルガタナスの巻」のような意。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「せわしい奴だな。何が始まるんだ?リジュ、ローズティーを用意してくれ。話が長くなりそうだ」
 フェアリーのリジュは、アスタロトの想い人だ。サーティとアスタロトが結婚するずっと以前から、リジュはアスタロトと、アスタロトの城に住んでいる。
 
 アスタロトはパチンと指を鳴らし、部屋全体をバラの花でいっぱいにした。そして、その手に白いバラの花束、一輪だけ真っ赤なバラを添えて、サーティに渡した。
 「へぇ、気が利くじゃない。さすが、アスタロト。よく私の好みを知ってたわね」
 アスタロトはフンッと鼻で笑った。

 
 「マルコシアスね。私を襲いそこねた時の話、覚えていたのね」
 サーティはバラの香りを少しだけ吸い込むと、大理石のテーブルに置いた。それから、アスタロトのお気に入りのソファーの長椅子の、アスタロトの隣に滑り込むように座った。
 「つまらないわ。何でも見えるなんて。でも、誰にも言わないなんて、もっとつまらない。だから、来たのよ。」
 

 リジュがローズティーを用意してきた。
 「リジュ、あなたも座って。ここの女主人は、あなたなのよ」
 「い・・・いえ、私は、ここで・・・」
 サーティがアスタロトをちらりと見た。
 「まだ、召使い扱い?リジュは他の女とは違うのよ。あなたの女遊びは認めてるけど、リジュの扱いは、考えるべきね」
 アスタロトは、流すように眼をそらし、ローズティーに手をつけた。

 
 「ホラ、見て」
 めんどうくさそうに、アスタロトがクリスタルを覗く。しかし、次の瞬間、アスタロトは眼を疑った。
 「ほうら、興味が湧いてきたでしょ?」
 「洪水か?かつてのノアの洪水・・・まさか・・・」
 「その、まさかよ」
 「知っていたんだな、サーティ」
 「もちろん。私にわからないことはないのよ。この何でも見通せる眼は、ルシファーが私に与えたものなのだから」

 
 アスタロトは、不愉快そうに舌打ちをした。
 「わたしの前で、ルシファー様を呼び捨てにするな。親を呼び捨てにするのは愉快ではない。何度も言っているはずだ」
 サーティは首をすくめた。
 「ルシファーはルシファーだわ。おとうさま、と呼ぶのは、本人の前だけ」

 
 アスタロトはあきれ顔でサーティを見ていたが、クリスタルに映る光景の方に興味を注がれた。
 「・・・本当に、あのノアの洪水が起こったのか?」
 「そうよ。いずれ、この世の乱れを正す、という名目で起こるべくして起こるはずだった。人間を作ってから、この繰り返しよ」
 サーティは、さらに笑みを浮かべた。
 「もっと、おもしろいの見せてあげる」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン最終章#6ルキフェル第三軍団大将サルガタナス

※再度起こったノアの洪水、その発端にまつわる話はこちらから
トンニャンシリーズ「天使チェリー」

https://note.com/mizukiasuka/n/nac25312c16c8?magazine_key=mf04f309d9dfc

次回トンニャン最終章#8 サルガタナスへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/ncc8fa48813fe

前回トンニャン最終章#6 サルガタナスはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n5b99ffb6d31a

トンニャン最終章、最初から読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/mb128933fa182


 



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