元祖 巴の龍(ともえのりゅう)#41(相関図付)
時は少しばかり遡る。
兵衛・葵・洸綱が粛清(しゅくせい)にたどり着いた時、もう桜が咲き始めていた。
洸綱は町外れに手ごろな家を借りて、子供を集めて算術などを教え始めた。
来良(らいら)にいた時も、同じことをして生計を立てていた。また兵衛はその手伝いをしながら、時々望む者に太刀の手ほどきをしていた。
葵もお針子の仕事を少しもらえるようになった。それぞれができることをしながら、機をうかがっていた。
「兵衛、わしの太刀もおまえの太刀も、打ち直してはどうだろうか」
「太刀をですか」
洸綱は自分の太刀を莢から引き抜くと火にかざしてみた。
「この十五年、自ら手入れはしてきたものの、打ち直したことはなかった。来良に良い職人がいなかったことが理由だが、この粛清は職人の町。刀鍛冶も大勢おる」
兵衛も自分の太刀を改めて見てみた。今後のことを考えれば、早めに打ち直す方が、良いかもしれないと思った。
兵衛は刀鍛冶の集まる、鍛冶屋町に来ていた。見事なほどに鍛冶屋が立ち並び、あちこちで槌を打つ音が響いている。
とある一軒の鍛冶屋に足を止めると、持参した自分の太刀を差し出した。
「かと言うて、二本とも一緒に出すわけにもいくまい。まず、おまえの太刀を頼んでくるがよい」
出がけに洸綱がそう言ったので、兵衛は自分の太刀しか持ってきていなかった。
太刀を預ける時、ふと興味が沸いて工場を見せてもらった。
初めて見る工場は蒸気で曇るほどで、汗をかきながら、休まず仕事をしている。
そのなかに一人の女子(おなご)の姿を認めた。
「あの人は女子ではありませぬか」
兵衛が指さして言うと案内してくれた男はうなずいた。
「あぁ芹乃(せりの)ですね。あいつは特別でさ」
「特別とはどういう?」
「いやね、お客様みな珍しがるんですが」
と、男は話し始めた。
******
芹乃は粛清に来てから市場で野菜売りの手伝いをしていたが、丈之介が鍔を作っていることもあって、鍛冶屋町に用事を頼まれることがあった。
続く
ありがとうございましたm(__)m
※相関図、写真が下手で、曲がってて、すみません。2001年作成。
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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