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トンニャン#49 大天使ラファエル

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ラファエルの巻」のような意。話の位置は前回の「アポロンの巻」の次。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「えぇ、あなたの役割である、中級六階級目のパワーズ(能天使)は、法則と秩序を守る役目ですよね。その厳しい任務の為、最も堕天使が多いと聞いています」
ラファエルは少しだけ額にしわを寄せた。そして、自分もティーカップに手を伸ばすと、少しさめかけたレモングラスティーを流し込んだ。
「おっしゃるとおりです。取り締まる立場にありながら・・・」
「いや、責めているのではありませんよ。パワーズ以外でも、数多くの天使を魔界に堕とし、堕天使にしていますよね」
「はい。それが仕事ですから」

アポロンはまたレモングラスを飲みながら、まだためらっているようだった。
「パワーズの仕事の事で何か?それとも堕天使の事ですか?」
ラファエルは首をかしげながら、アポロンを見つめている。アポロンは少し顔を斜めにして、ラファエルから目をそらした。
「あの・・・ブラックエンジェルという堕天使を覚えていますか?」
「ブラックエンジェル?あぁ、天使長を誘惑した罪で堕天使となった元エンジェルスですね」
「そうです。・・・その、噂なのですが、ちょっと耳に入り、気になりまして」
「噂、ですか?」

「はい。その話の前にお聞きしたいのですが、ブラックエンジェルの相手の天使長は、結局誰だったのですか?」
ラファエルはため息をつきながら再び熱いレモングラスをティーカップに注いだ。
「わかりませんでしたよ。真実は闇の中です」

「そう・・・ですか。実は、ブラックエンジェルは、堕天使となる直前、子供を生んだという噂を聞きまして・・」
アポロンは、ラファエルの顔色をうかがうように、ゆっくりと話している。
「子供、ですか?いったい誰がそんな噂を流しているのでしょうか?」
「いや、噂はあくまで噂ですから」
ラファエルは今度は熱いレモングラスを少しだけ口に入れた。舌が焼けるほど熱く、ラファエルはむせって咳をした。
「大丈夫ですか?」
アポロンが気づかったが、ラファエルは答えようとせず、少しの間沈黙が流れた。

「いましたよ」
あっさりとラファエルが言うと、今度はアポロンの顔色が変わった。
「翼を引きちぎって魔界に堕としましたから、生きているかどうかはわかりませんが」
アポロンは、またゆっくりと言葉を選びながら口を開いた。

「その、ブラックエンジェルは、記憶を操作されたか、封印されたのか、子供の事も、誘惑した天使長の事も、覚えていないそうです」
「・・・わたしではありませんよ。おそらく自分で封印したのではないですか?覚えていますよ。どんなに暴行されても、父親の名は言いませんでした。アポロン、あなたは何処からその情報を?」
アポロンは答えることが出来ず、黙ったままだ。
ラファエルは、まだ少し咳をしている。
「言いたくないなら、いいですよ。あの時は・・・」
ラファエルは、もう隠しても、意味のない事を悟った。そして、エンジェルスを捕らえてからの事を克明に話し始めた。

事の顛末を聞くアポロンは、顔を伏せ、表情を読み取られないようにしているように見えた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#49 大天使ラファエル

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャンが全部読めるマガジンはこちら
https://note.com/mizukiasuka/m/mf04f309d9dfc

次回トンニャン#50 大天使ラファエルへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/ne648bd9c243e

前回トンニャン#48 大天使ラファエルはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n3a38d65e04a0

最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

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水月あす薫SIRIUS
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