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淡い 蒼い 時代


エンピツみたいなあなた



ポキンと 折れそうなくらい ほっそりとして

背が高く ちょっと背中を丸めて

ポケットに手をつっこんで

歩いてる 後姿が 想いだされる




今ならスレンダーな モデルタイプ?

切れ長の目をして 世の中を斜に見て

何もかもわかったふりして

自分が大人だと信じていた




太宰治に 傾倒し

 

寺山修二 唐十郎

アングラと呼ばれた時代の寵児達に

肩を並べると思いこむくらい

人生を 達観したと 思いこんでいた



あのコーヒーの店 覚えてる?

連れて行ってもらったのはいいけど

方向音痴の私は 正直

場所を 覚えていない

繁華街を うろうろ 歩いて

小さなビルの二階

どこだったのだろう



私も強がって ブラックコーヒーを

飲んだね

ほんとうは ミルクを入れないと

胃が痛くなるのに



あなたの講釈を聞きながら

窓から映る景色も

よく 見えなかった

私が見ていたのは

何だっただろう

あなたの顔も

直視できなかったのだから

どこを 見ていたかしら




何の話題だったかな?

私がコーヒーを口に運んだ時

急にあなたが


「かわいいんだね」


と 言った



私のカップは宙に舞い

テーブルを コーヒー色に染め

床にしたたるコーヒーと

テーブルにひっくり返ったカップ


あせって ティッシュを出したら

・・・・ティッシュは びちゃびちゃに



無言で店員がやってきて

テーブルを拭く姿

顔中 赤く爆発した私と

小さな笑いが止まらないあなた



私のコーヒーの想い出は

苦く 淡く 恥ずかしい



あれから 長い時が過ぎても

あなたの時間は止まっている



あの十代最後の時の

あの 笑ったあなたが

私の胸の奥にいる



2008年11月7日

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水月あす薫SIRIUS
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