トンニャン過去編#60 ミセス・ボニー・ガン(原題「フェニックス」)
※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「コーラの巻」の次。「ミセス・ボニーの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです
じりじりと迫る敗北の予感。チェリーは精も根も尽き果てようとしていた。今チェリーを支えているものは、唯一無二のプライド。それは・・・。
そしてチェリーが気力まさに尽き果てんとした時、大きな落雷がチェリーとリリスめがけて落ちてきた。
「ふふ。これでチェリーは消える」
リリスが勝ちを確信した時だった。
「チェリー!!」
コーラの声が響いた。落雷が直撃して、あたりは黒煙で見えなくなった。
「チェリー・・・チェリー・・・」
コーラは、リリスとチェリーがいた屋根の上を探していた。足元にキラキラ光るものが落ちている。
「これはリリス様のアクセサリー・・・。チェリーは?」
黒煙の中でうごめくものが見える。
「チェリー!」
コーラはやっとチェリーを助け起こした。リリスは・・・。
黒煙が少しずつ晴れ、チェリーを支えるコーラの目に倒れているリリスが映った。
「何故・・・。たかが天使に・・・」
チェリーはコーラの手を離れ立ち上がった。
「私は天帝の直系の天使。つまり、天帝の娘」
「・・・直系の天使?む・す・め?」
リリスはそのまま気を失った。そして、チェリーとコーラの目の前で、意識のないままふわりと浮き上がると、最後の黒煙と共に消えていった。
「チェリー、今言った事、本当なの?」
「そうよ。隠してたつもりはないのよ。話す機会がなかっただけ」
「・・・トンニャンは何もかも知っていたのね」
「おそらく・・・」
チェリーの言葉は、途中で途切れた。
コーラは、チェリーをマンションにつれて帰り、ベッドに寝かせた。
チェリーの部屋を出ると、トンニャンがリビングのソファーに座っていた。
「トンニャン、リリス様はどうなったの?」
「魔界に帰ったわ」
「無事なのね?」
「もちろんよ。ただし、かなりの深手を追ったわ。当分魔力は回復しないでしょうね。もう、コーラを襲う力もないわ」
「そう・・・」
複雑な表情でコーラもソファーに座る。いつのまにか目の前にコーヒーが入れてある。コーラの好きなアメリカンコーヒーだ。コーラはその香に惹かれるように、カップに手をかける。
ほんの少し甘い・・・。
いつもの少な目のコーヒーシュガーを入れた味だ。
「トンニャン」
トンニャンは、またブラックコーヒーを飲んでいる。
「チェリーが目覚めたら、コーヒーを入れてあげましょう」
コーラはうなずく。
「えぇ、ミルクとシュガーをたっぷり用意してね」
自然とトンニャンとコーラの目が合い、コーヒーを含みながら、笑いあった。
二〇〇七年平成十九年八月十二日(日)(原文一九七七年四月)
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン過去編#60 ミセス・ボニー・ガン(原題「フェニックス」)
※(2006年頃)トンニャンシリーズにあるように、リリスはほぼ初めての辛酸を舐めた後も、これらの出来事を引きずっていきます。だからこそ、リリスのコーラに対する風当たりは、人一倍強いのでしょう。
トンニャンシリーズ「魔女裁判長リリス」はこちらから
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