
ある独白#12
次の日曜日、珍しく耀子は休みがとれた。
「リュージ、今日二人で出かけるわよ。
外では『弟の竜次』として行動してちょうだい。
そうね、お弁当作ってよ。天気がいいから、外で食べるわ」
耀子はリュージをせかせて駐車場に降りた。
ロボットは免許が取れないので、もちろん耀子の運転だ。
「いい?今から弟よ、間違っても『お嬢様』なんて呼ばないでね」
車が発進しマンションの駐車場を出ると、助手席の竜次が話しだした。
「どこ行く気だよ。たまの日曜だってのに、姉さんとデートもないもんだ」
耀子は驚いて横を見た。
「あぶないなあ、ちゃんと前見ろよ」
あわてて前を見なおすも、さっきまでのリュージとは別人のようだ。
耀子の弟・葛城竜次は、耀子と対等に口をきいている。
「姉さん、どこ行くんだってきいてんだろう。」
「あ・・・あぁ、そうね。天気がいいから、どっか見晴らしのいい公園でも・・・」
「何の因果で日曜日に姉弟で公園に行かなきゃならないかな」
公園につくまで、竜次は耀子の驚く発言を並べ立てた。
聞いていて腹の立つような言い方もあったが、もしかして弟がいたら
姉弟というのは、こんなものかもしれない。
一人っ子で片親。さらに父と離れて暮らしてきた耀子には
ある意味、新鮮だった。
公園には親子連れや恋人同士がたくさんいた。
耀子と竜次は、シートを広げて座った。
「恥ずかしいよな。こんなところで昼メシ食うの。
まだ姉さんと恋人のふりでもした方がましだな」
そう言われて『恋人』という選択肢も心が動いたが
弟だけでもこんなに変わるのに、さらに恋人というのは
一日で体験するには恐ろしい気がした。
「なんか のどかわいちゃった。ポット、コーヒーだったよね?
冷たい飲みもの買ってくるから、ちょっと待ってて」
耀子は席を離れ、竜次はひとりでシートに座っていた。
「葛城・・・竜次・・・?」
振り返ると、年恰好は二十二・三歳くらいの男が立っていた。
「俺だよ。大学で一緒だった・・・。
竜次がロボットだったって新聞で読んだ。
ショックだったよ。
友達だと思っていたおまえが、人間じゃなかったなんて」
ありがとうございましたΣ(・ω・ノ)ノ!
ある独白#12我が永遠の鉄腕アトムに捧ぐ
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かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
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#13へ続く
#1最初からは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nb5ab031cb177
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