トンニャン過去編#53 コーラ・デビル(原題「フェニックス」)
※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「ビリーの巻」の次。「コーラの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです
審議内容は、すべてコーラに不利だった。時が瞬く間に過ぎてゆき、最終決議を下す時が来た。裁判長であるリリスが立ち上がった。
「有罪。コーラに死刑を宣告する。」
悪魔達から拍手が起こった。
「終わった・・・」
そうコーラはつぶやき、ひとすじの涙を落とした。
「終わりじゃない!」
トンニャンが強く言い、立ち上がった。
「私はこの決議に納得がいかない」
リリスの顔が曇る。しかし、その表情を変えずに、トンニャンを見つめる。
「私の決定は絶対です」
トンニャンはふふん、と鼻で笑った。
「たかが悪魔の決定に、絶対などという言葉はないわ。」
リリスのプライドに亀裂が走る。
「今、コーラはルシファーの力によって、魔力を失っている。つまり、彼女は今魔女ではなく、人間という事になる。しかも、脱走の罪はルシファーに許しを得ている。そのコーラが死刑になる理由などないわ。」
法廷は静まり返り、物音ひとつしなくなった。リリスの怒りを誰もが感じ取ったからだ。
リリスは憤りを抑えて口を開いた。
「あなたの言い分は最ものように聞こえます。しかし、それは言い逃れに過ぎない事を、あなた自身知らないのです」
突然トンニャンが声を上げて笑い出した。
「何がおかしいのです?!」
「リリス。はっきり言ったらどうなの?『私はコーラに嫉妬しています』『コーラを殺してやりたいくらい憎い』って。『ルシファーの気持ちが動くかもしれない・・・それを恐れています』って。」
リリスはもう無表情ではいられなかった。たくさんの悪魔達の前で恥をかかされたのだ。その目をカッと見開くと、リリスは法廷を見回した。
「この二人を八つ裂きにしなさい。」
それを聞いた法廷にいた悪魔達が、トンニャンとコーラに飛びかかろうとした。
「やめてください!リリス様、私は死んでもかまいません。トンニャンを助けてください!」
コーラの叫びに、悪魔達が一瞬ひるんだ。再びリリスが声を上げた。
「この二人を、八つ裂きにしなさい。」
悪魔達はその姿勢のまま、また飛びかかろうとする。
その時だった。
「待て!」
鋭い声が法廷を貫いた。そして、六枚の翼を持つ光り輝く大魔王ルシファーが降り立った。悪魔達は呆然と立ち尽くしている。リリスは怒りに震え、コーラの胸は張り裂けそうだ。
ルシファーはコーラとトンニャン近づいていった。
「トンニャン・・・すまない」
トンニャンが首を振る。ルシファーはリリスに目を移した。
「リリス、わたしはコーラを愛している」
法廷全体がどよめいた。
「あなた、皆の前でなんて事を・・・」
しかし、ルシファーはやめなかった。
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン過去編#53 コーラ・デビル(原題「フェニックス」)
■20年以上の時を経て(2006年頃)、この物語の続きを書いた時、ルシファーはこんなキャラクターではなくなっていました。しかし、幼い子供が書いたこととはいえ、昔描いたことは変更できないので、このままにしました。
2006年ごろから書いたトンニャンシリーズは、この出来事あってこそのストーリー展開となっていることも、間違いないのです。
【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024
次回トンニャン過去編#54 コーラ・デビルへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n29ab836063f1
前回トンニャン過去編#52 コーラ・デビルはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/ne85e08d6563d
■トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d
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