Love's night #1
『比留川(ひるかわ)』
その表札を見た時、勢(せい)は にわかに不安になった。
気づいていなかったわけではない。
気づかないふりをしていたのだ。
心に湧き上がる疑問を言葉にするのが恐ろしく、
聞けなかっただけなのだ。
だが、ここにきて、いやすでに家の前に来て、
やはり勢は、ドアフォンを押すのをためらった。
「パパ。タカネせんんせ~んち、ここなの?」
まだ幼い更冴(さらさ)は、今日という日を楽しみにしていた。
何日も前から、保育園から帰るとカレンダーを見ながら、
タカネの家に行く日に付けられた丸を指でなぞり、嬉しそうにしていた。
もちろん勢も、この日を心待ちにしていたはずだった。
「え~い!」
いつまでもドアフォンを押さない勢に、四歳の更冴が待っていられるわけがない。
更冴は 思いきり飛びあがってドアフォンを押した。
ほどなく 待っていたような、ドアフォンからの聞きなれたタカネの声。
「はい。」
「タカネせんせ~。更冴で~す。パパも来たよ~」
うろたえる勢をよそに、家の中から駆けつけるスリッパの音が響くと
玄関が開き、満面の笑みを浮かべたタカネが顔をだした。
ありがとうございましたm(__)m
Love's night #1
最新作「駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
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