トンニャン最終章#12 フェアリー リジュ
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
話の位置は「サルガタナスの巻」の次、「リジュの巻」のような意。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
「アスタロト様!」
リジュは、バリアを割られ真っ逆さまに落ちてゆく。
今、名前を叫んでくれたのは、アスタロト様。いや、アスタロト様だけじゃない。もう一人の声。
サーティ様の声だった。お二人とも、私を心配してくださっていたのね。
スローモーションのように、波のうずに向かって落ちながら、リジュの頭の中を、そんな思いがよぎった。
「サーティ、何をやっているんだ!」
アスタロト様の声?
・・・サーティ様?
リジュは、すでに波の渦に巻き込まれ、ぐるぐる回っていた。そして、そのリジュを追いかけるように、一緒に巻き込まれて渦の中にいるのは、
「サーティ様!?」
「リジュ、つかまって!助けるから、つかまって!」
サーティは、自分も渦に飲まれているのに、リジュを助けようとしている。
リジュは、雨やまぬ空を見つめた。
アスタロトが何か叫んでいる。こちらに、渦に向かってこようとしているのだろうか。サルガタナスとマルコシアスに身体をつかまれて、動きが取れないでいる。
「離せ!サルガタナス、マルコシアス。サーティとリジュが落ちたんだ。助けに行かなければ」
「無理だ。アスタロト。この洪水は天帝の起したもの。我々が何かしたところで、何も変わらない」
「サルガタナスの言うとおりだぜ。おまえが今、渦に落ちても、落ちて命を落とす悪魔が増えるだけ。アスタロト、おまえに仕えてきた部下を全て捨てて、サーティとリジュのために命を捨てるのか?」
「違う。そうじゃない。殺したくない。サーティも、リジュも、ここで見捨てたくないんだ」
「ルシファー様の娘だからか?これは不可抗力だ。おまえのせいじゃない」
「それでも、救いたいんだな。」
そのとき目の前が明るくなり、光の中から天使が現れた。
「ウリエル!」
「久しぶりだな、アスタロト」
「私も。久しぶりね、アスタロト」
ウリエルの隣に現れた女性の天使を見て、ウリエルの冷静な眼が動揺に変わった。
「ガブリエル、どうして?」
「来ちゃった。ミカエルも、どこかで誰かを助けてるわ」
「来ちゃったって・・・」
「それより、今の状況でしょ」
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン最終章#12 フェアリー リジュ
※ノアの洪水、今度のノアは「ノエル・クワイエット」妻は、旧姓・メアリー・グラウンド。ノエルの祖先、メアリーの祖先については、トンニャンシリーズ「天使チェリー」こちらからhttps://note.com/mizukiasuka/n/nac25312c16c8
トンニャン過去編・ネッド・グラウンドの妻・「アン・バスカント」はこちらからhttps://note.com/mizukiasuka/n/n33eb617ac3bc?magazine_key=me347e21d7024
コーラが人間界に初めて現れる話「トム・クワイエット」こちらから
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次回トンニャン最終章#13 リジュへ続く
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