
元祖 巴の龍#73(相関図付)
桐紗は自分の羽織一枚、菊之介の肩にかけてあげた。
「私はいつも菊之介に迷惑ばかりかけてますね」
「義姉上、ずいぶん神妙ではないですか」
「もう・・・菊之介の意地悪、鈍感!」
桐紗が声を上げた時
「あ、いた。菊之介様!桐紗様!」
と川向うから聞き覚えのある声が聞こえた。菊之介と桐紗が驚いて声の方を見ると、それは芹乃で、隣には葵もいっしょにいた。
芹乃と葵は、近くで橋を見つけるとくるりと回って、菊之介たちの元へやってきた。
「何をしていたのだ」
芹乃は、菊之介と桐紗を見ると開口一番こう言った。
「何って・・・」
と、菊之介は自分と桐紗を交互に見て、言い訳する言葉が見つからなかった。菊之介は桐紗に羽織を返すと、おもむろにまだ濡れている自分の着物を着た。
兵衛と大悟は、芹乃と葵を戸惑いながら迎えた。特に兵衛は、葵に対して良い顔をしなかった。
「葵、どうしたと言うのだ。粛清での最後の日、きちんと話したではないか。
この旅は命がけの旅、帰れるかどうかわからない。だが、葵も武家の妻としての覚悟を納得したはず」
葵はうつむいて黙っている。代わりに芹乃が口を開いた。
「葵様からほんとうのことを聞きました。
葵様にしてみれば、このまま兵衛様と別れられるはずがない。
これがお二人の、最後の機会になるやもしれませぬ。
私たちは離れたところで野宿しますから、今夜はお二人でお過ごしください」
芹乃に「ほんとうのこと」と言われて、兵衛は言葉に詰まった。
そしてしばらく芹乃を見つめていると、覚悟を決めたように葵の肩に手を伸ばし、山小屋に入って行った。
「ほんとうのこと、というのは何の事だ?」
兵衛と葵を山小屋に見送った後、大悟が芹乃に聞いた。
続く
ありがとうございましたm(__)m
※相関図、写真が下手で、曲がってて、すみません。2001年作成。

「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
次回 元祖 巴の龍#74はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n8ff8e94b11a2
前回 元祖 巴の龍#72はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n4ba5e7f5e8c4
元祖 巴の龍 を最初から、まとめて読めるマガジンは、こちらからhttps://note.com/mizukiasuka/m/m19d725f12ae1
「巴の龍」(「元祖 巴の龍」の後に書きなおしたもの、一話のみ)はマガジンこちらから
※私事多忙のため、毎日投稿できないので、まとめて五話づつ、投稿しています。
お時間あるとき、一話ずつ読んでいただけると、嬉しいです(≧▽≦)
いつも、ありがとうございますm(__)m
いいなと思ったら応援しよう!
