元祖 巴の龍#23(相関図付)
丈之介の鍔細工は思いのほか売れた。
昔、桔梗に作ってやった鍔が、実は丈之介の最初の作品だった。
あのいくさの前で、お守り代わりに作ったのだが、今はそれが芹乃との生活の支えになっている。
大悟やあの娘・菊葉、光の龍、と気がかりなことは尽きなかったが、今の丈之介にはどうすることもできなかった。
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来良の冬は雪が少なく、温かく過ごしやすかった。
東の新城と気候があまり変わらず、菊之介は時々城での生活を思い出した。
幼き日、母と義姉・桐紗と遊んだ雪遊び。
たまにしか降らないだけに、降った時は嬉しくてはしゃいでしまった。
明るく美しい義姉・桐紗といるといつも楽しく、何でも話し合えた。ただ一つのことをのぞいては・・・。
菊之介が自分を女ではないとわかったのは、いつのことだっただろう。
物心ついた頃より、母と侍女の楓から、決して男であることは人に知られてはならぬ、と言い含められていた。
仲の良い一つ違いの義姉・桐紗にも秘密にせねばならなかった。
菊之介にとってそれは一番つらいことだった。
桐紗は菊之介が逃げた後、菊之介が男だったと知ったのだろうか。
そしてそれを、どう思ったのだろうか。
また、菊之介を逃がした母・桔梗は生きているのだろうか。
三つ口定継に関しては、菊之介はあまり悪い印象はなかった。
たまに桔梗の住む城の西に現れると、桐紗と菊葉を可愛がってくれた。
それを分け隔てしているようには感じなかったし、まして男と知れたからと言って、殺されるなどとは信じられなかった。
だから菊之介は城を出る時に桐紗に別れを告げたかった。
義姉が菊之介の命が奪われることに加担するなどとは、考えられなかったのだ。
「菊之介、見つけたぞ。伯父御らしき人物が借りていた家の場所がわかったぞ」
大悟の声で我にかえると、菊之介はまだはっきりしない頭を、気持ちを切り替えようと思い切り振った。
「借りていた。ということは今は借りていない、ということですか」
「いやそれは、わからんが。話の様子だとどうも風体が伯父御のようなきがするのだ」
「独りで住んでいたのですか」
畳み込むように菊之介は聞いてくる。
「十六・七の息子と娘といっしょに暮していたらしい」
続く
ありがとうございましたm(__)m
※相関図、写真が下手で、曲がってて、すみません。2001年作成。
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そして、またどこかの時代で
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