トンニャン最終章#28 後のこと
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
話の位置は「ミカエルルシファーの巻」の次、「後のことの巻」のような意。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
「おそらくって。父上、自分のしたことに、母上に対して!」
「リリスには、すまないと思ったこともあった。しかし、リリスと一緒になった時も、今も、リリスは他の悪魔の子どもを生み続けている。言い訳かもしれないが、わたしの贖罪は、それと折り合っているのではないか」
「ミカエル様も、そう、思われるのですか?」
「ウェヌスは愛と美の女神。恋と欲望の女神。今も夫のヘパイトスの城に住み、ほかの天使との間に、子を生むことを許された。唯一無二の存在」
「だから、ウェヌス様を選んだと」
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「父上、コーラのことは?」
「おまえがいつまでも動かないから。保護しなければならなかった」
「父上・・・」
「それで、やっとリオールが本気なった。それが今に繋がる。コーラは、悪魔皇太子妃として、申し分なく成長した」
ルシファーのもの言いに、リオールは言葉がない。
「納得してくれ、とは言わない。だがクビド。これが真実だ」
「ミカエル様!」
クビドは絞り出すように声を上げた。
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「父上。俺は母上を遠ざけていた。母上がコーラを認めないからだけじゃない。子供じみた反抗もあった。しかし、母上は、俺たちを生んでくれた。生んでくれたことに、変わりはないんだ」
リオールは唇を噛んだ。
再び、天上界 ミカエルの城
「クビド、たまにはこうして二人で過ごすのもいいな」
「はい」
生まれてすぐ、いずれケルビム(智天使)となる修行に出され、父を父とも呼べないで育ち、今も父とは呼べない。それでも、たったひとりの父親だ。
————少し前・洪水後の四大天使たち―――――
「ミカエル、本当に天上界に帰っても大丈夫かしら?」
ガブリエルの不安そうな言葉に、ミカエルはかぶせて言う。
「入口に来て何を言っている」
「だいたいルシファーに借りを作ったみたいで、気に食わない」
ラファエルは、すっかり天上界の言葉を忘れたようだ。
「ラファエル、天上界に戻ったら、もとのラファエル。その言葉、せっかく大天使らしくなったのだから、戻せ」
「うっさいな、ウリエルは。だから、ルシファーにお守役とか・・」
「おしゃべりは、そのくらいで。ルシファーに借りなど作っていない。わたしたちは、この天上界に必要なのだ。だから、わたしは、ここにいる」
ミカエルの強い言葉にうながされるように、四大天使は天上界に一歩、足を踏み入れた。
再び、天上界 ミカエルの城
「何も無かったですね。天上界の全てが、クリスタルから見ていたはずなのに」
「そうだな」
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「ミカエル、ミカエルはいるの?」
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「ウェヌス様ですね。大丈夫ですよ。わたしがミカエル様は外出していると伝えます。あなたは、そこにいてください」
ミカエルは、書斎のドアから出てゆく息子を見送った。
「ルシファー、クビドはますますおまえに似てきたな」
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン最終章#28 後のこと
※たくさんの悪魔と交わり、たくさんの子供を生み続けるように義務づけられ、その義務を果たし続けなければならないリオールの母「魔女裁判長リリス」こちらからhttps://note.com/mizukiasuka/n/n9a39be1b5bde?magazine_key=mf04f309d9dfc
【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
次回トンニャン最終章#29 後のこと へ続く
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前回トンニャン最終章#27 後のこと はこちらから
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