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元祖 巴の龍#2
楓はもう絶命したのか、すでに気配すら感ぜられない。
後の方でバサッバサッと音がして、飛び上がりながら岸涯小僧無数にやって来る。
追いつかれる!菊葉は身を翻し、懐の小刀に手をやった。
すると、目の前に閃光が走った。岸涯小僧がもんどおりうって倒れた。
光と見えたのは一閃の太刀筋だった。菊葉の前に一人の若者が現れた。
「まったく、川でおとなしくしていればいいものを。人を襲うとは何事だ」
若者が言い終わるや否や、再び岸涯小僧が襲いかかって来た。
若者は巧みに太刀を操り、次々と妖怪を倒してゆく。
菊葉もかろうじて躱しているが、若者も菊葉も斬っても斬っても絶えることのない岸涯小僧に、確実に疲れが見えてきた。
「くそっ!きりがない」
若者も逃げながら菊葉の方に目を向けると、菊葉はまさに岸涯小僧に手をかけられようとしていた。
若者は体を地に滑らせて、菊葉の方に転がった。
と、その時、岸涯小僧の手の水掻きが、菊葉の衿を掴んだ。
すると菊葉の胸が光を放ち、と同時に若者の右腕も眩しく光り、そこにくっきりと、龍の紋章が現れた。
その光は、岸涯小僧の群れをちりぢりに吹き飛ばし、跡形もなく消し去った。
若者は茫然として、光が消えてゆくのを見つめていた。
その龍は、髭を蓄えた横顔に、長い爪の片方の前足を顔の前に突き出していた。
やがてその龍の紋章も消えて、辺りは静かになった。
若者は気を失っている菊葉を抱き上げると、その体を肩に担いで歩き出した。
**************
「その龍の紋章はこの娘にもあったのか、大悟(だいご)」
父・丈之介に聞かれて大悟はうつむいた。まさか、着物の中を見るわけにもいくまい。
「光がいっしょに放たれたのは本当だが、龍の紋章は確認できなかった」
続く
ありがとうございましたm(__)m
元祖 巴の龍#2
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そして、またどこかの時代で
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