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パズル⑤月と水と・・・・・

子供の頃から 自分だけが 違う人間のように思えた。

寅吉が亡くなって一週間後に生まれた弟。

寅吉の望んだ 跡取りだ。

親の愛情が弟に移ったことは 四歳の美咲にはすぐ わかった。

おじいちゃん おじいちゃんだけが 私をかわいがってくれた。

美咲は そう思い込んだ。

今日は ツキの三十七回忌。

美咲が一歳の時 亡くなったので、美咲の年が

ツキの法事と 重なる。

ツキ・・・つき・・・月・・・。

おばあちゃんの名前は ツキだったんだ。

いや、知っていた。小さいときから 知っていた。

今まで 何故気づかなかったのだろう。

美咲が 常に心惹かれ その光に心奪われていた月。

それが 祖母の名だったとは・・・。

では、水は?

美咲は 水にも惹かれていた。幼い時から、ずっと。

祖父が亡くなって美咲は孤独だった。

姉であることで 弟より常に大人であることを要求され

子供ではいられなくなった。

ある時、星占いで、十二星座は 火 土 風 水 の

四つに分かれると知った。

火と風は 風にあおられて火が燃えるので 相性がよい。

土と水は 水が土にしみこみ ひとつになる。

美咲の両親 次郎と智恵は水 弟は土だ。 相性が良い。

美咲だけが 火だった。

火と水は 交わることなく 土は火を消してしまう。

だから、親や弟と合わないのか。幼い美咲は、そう思い込んだ。 

昔から惹かれていた架空の生物がいる。

鳳凰とドラゴンだ。

幼き日に見た 絵本の見開きの鳳凰が眼に浮かぶ。

吹き出る火山を 背景に 炎の鳥が飛ぶ姿。

そして 龍。

美咲は 手の平をひろげてみた。

パズル⑤月と水と‥‥‥

2008年作品(まだ水月あす薫が、生まれない頃)

                        パズル⑥に続く

最新作「駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね





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