トンニャン過去編#62 フェニックス(原題「フェニックス」)
※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「ミセス・ボニーの巻」の次。「フェニックスの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです
クビドがチェリーの手を取ると、チェリーは翼のある本来の姿に変わった。二人はニッコリと笑うと、トンニャンとコーラに微笑を残して、天上界へと消えていった。
「・・・コーヒー、無駄になっちゃったね」
コーラがポツリとつぶやいた。
「大丈夫、私が飲むわ。ブラックのままで」
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「驚いたな。あの、コーラがチェリーの名を叫んだ瞬間、落雷がリリスに向けて落ちてきた。
いや、落ちる方向を変えた。さらに、その落雷に力が加わっていた。
でなければ、リリスがあんなに深手を負うはずが無い」
「気づいていたか、ルシファー。あれがコーラの力だという事に」
「信じがたい事だが、並みの魔女の力ではない。天上界では、コーラの力に気づかなかったようだな」
「あぁ、おそらくミカエルも気づいてはいない。ふっ・・・。コーラ本人すら、自分がチェリーを助けた事に気づいていない」
「コーラは、この魔界で必要不可欠な力になるだろう」
「きちんと保護しろよ。大切にな。」
「もちろんだ」
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「トンニャン、いつまで人間界にいられるの?」
コーラは、チェリーがいなくなってから、寂しくてたまらない。
「そうね、ミセス・ボニー・ガンが、出産までかな。あと三ヶ月?」
「私もそうしたい。・・・いや、もう魔界には帰らない」
トンニャンには、コーラの気持ちがすぐにわかった。
「コーラ、リリスはあなたにもう何も出来ない。何も心配する事はないわ」
コーラは首を振る。
「私は一介の魔女でしかないのよ。ルシファー様に愛される資格なんてないわ。確かに、ルシファー様には憧れていたわ。でも、リリス様を押しのけてまでルシファー様を奪おうなんて大それた事、考えた事もないわ」
季節は真冬。外は雪だ。トンニャンとコーラはハーブティーを飲みながら、雪景色に目をやる。
「チェリーがいたら、レモングラスの香りがするのね」
また、コーラはポツリとつぶやく。
「私はこのラベンダーが好き。コーラのミントも、さわやかな香りじゃない」
「トンニャンはいつも冷静ね。あわてた所を見たことがないわ」
「あわてさせてみたい?」
「・・・ちょっとね」
トンニャンは、そのまなざしをコーラに向ける。コーラは優しい女だ。魔女でありながら優しすぎる。そんなコーラが魔界で生きていくには、大いなる翼が必要だ。そしてそれが誰あろう、大魔王ルシファーなのである。
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン過去編#62 フェニックス(原題「フェニックス」)
※この時点で、悪魔皇太子リオール(ルシファーの息子・後のコーラの夫・オリジナルキャラクター)の存在を、私は考えていたわけではありません。まして、コーラの出生の秘密など(2006年頃の作品)全く知りませんでした。ルシファーとトンニャンの意味深な会話を聞くと、思いつくまま描いたことが、20年以上の時を経て、謎解きが行われていくのだと、感慨深いです。
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