エンドレスヒールⅡ-3.11 #15あさみの場合
(再、2011年4月~)
図書館でのアルバイトが始まって一週間。
といっても、週に4日しか働かないのだから今日で4日目。
浅海と唯野(ゆいの)は、相変わらず同じ書棚を並べ替えている。
「やっと一列終わったけど、二列目と三列目が完全にまざってるわね。」
「はい。一列目に入るべき本も、こんなに・・・。」
浅海と唯野はブックトラックに並んだ本を見て、ため息をついた。
「どうしますか?ブックトラックの二段分くらい、一列目の書棚の本がありますが。」
「移動しようか。」
「はい?」
「一列目を移動しないと、入らないわ。」
「移動。」
「そう。」
「大移動、ですか?」
「そう。」
やるしかない。
浅海と唯野は、もう一度 一列目に戻り、本の最初から、移動し始めた。
本はギュウギュウに 詰め込む訳にはいかない。
あの 3.11の震災以前に貸し出された本が、戻ってくる、予定だからだ。
だから、余裕を持たせて、隙間を作らなければならない。
予定。
そう、貸し出された本は、あくまで戻る予定なのだ。
なぜなら、本を借りた お客様の安否を 全て把握しているわけではないから。
図書館同士での貸し出しもある。
S県内 たいていの図書館では自分の図書館にあって相手に無い本、
それをお客様が希望された場合、借りるまで時間はかかるが、
お互いの貸し出しをしている。
つまり、他図書館に貸している本もあれば、他図書館から借りてお客様に貸し出している本もある、といことだ。
しかし、貸出先の図書館が津波で流された所、壊滅的打撃を受けて閉鎖に追い込まれた所もあり、
こちらで借りていてお客様に貸し出した本も、戻ってくるのかどうか、
お客様の無事を祈る以外なかった。
「県内では、館長が亡くなったり、アルバイトが行方不明の図書館もあるらしい・・・。」
開館しても、本は、戻ってくる 「予定」 なのだ。
2011年6月15日(水)
続く
エンドレスヒールⅡ-3.11 #15あさみの場合
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
次回 エンドレスヒールⅡ #16はこちらから
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前回 エンドレスヒールⅡ #14は こちらから
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②エンドレスヒールⅡ あさみの場合 最初からはこちらから
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