トンニャン過去編#59 ミセス・ボニー・ガン(原題「フェニックス」)
※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「コーラの巻」の次。「ミセス・ボニーの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです
「・・・トン・・・ニャン・・・?」
チェリーが空を見上げると、チェリーのいる家の上を、炎に包まれた鳥が旋回している。それは、東洋では鳳凰、西洋ではフェニックスと呼ばれる、伝説の鳥そのものだった。
その鳥は何度か周りを回ると、近くの屋根に降りた。
「リリス様!」
走って来たのはコーラだ。
「リリス様、チェリーは関係ありません。やめてください」
チェリーは驚いて振り向く。そこにはルシファーの妻・魔女裁判長リリスが立っていた。
急に鳥が地に向かって降りたかと思うと、コーラの身体をその足の爪でつかみ、再び空に舞い上がった。
「邪魔者はいないようね」
屋根の上で、リリスは不敵な笑いを浮かべた。
「天使チェリー?最下級のエンジェルスね。何の地位もないただの天使が、私に勝てると思っているの?」
チェリーは間近で見る悪魔の、いわゆる女王ともいうべきリリスに身震いしている。ガブリエルが聖女と呼ばれ永遠の処女であるのに対し、リリスは悪女、男を常に誘惑する女とされている。
リリスは手を合わせ、なにやら唱え始めた。
*****
「リリスの目的は何なの?」
「おそらく、コーラに対抗する魔女の育成だろう。コーラは、魔女でありながら不思議な力がある。それは感じているよね?」
チェリーはコクリと首を下げる。
「あのマンションは、本来なら悪魔は入れない。それなのに、コーラは最初から入ってきた。とても戸惑ったけど、どうしてもそれが悪い事と受け取れなくて。それどころか近しくすら感じた」
クビドはうなずきながら言葉を続ける。
「そう、その理由は僕にもわからない。リリスもコーラの何か、ただの魔女と違うものを感じていたはずだ。だから、ただ魔女を育成するだけではダメだ。」
チェリーは雲の椅子から立ち上がった。
「人間の赤ん坊を狙うと?」
「純粋無垢のまだ生まれていない赤ん坊を子宮から取り上げて、魔界で魔女としての教育を受けさせる。それも、その赤ん坊が、コーラにとって大きな打撃になる、と言ったら?」
「・・・ミセス・ガンの妊娠中の赤ん坊を狙って来るというの?」
******
「呪文・・・?」
チェリーはそうつぶやき目をつぶった。全ての雑念をはねのけ、無心のなろうとしている。リリスの動きを読み取る為に。
雪が降っていたはずの空がにわかにかき曇り、冬の空に雷鳴がとどろく。そして雨が降り出した。リリスとチェリーは向かい合ったままだ。
チェリーがゆっくりと目を開いた。雨に濡れている姿に反し、リリスを見つめる目は乾いている。リリスとチェリーの目が、空中で火花を散らし、電流のように交差すると、さらに雷が強くなる。
「ふんっ。たかが天使の力で、何が出来るというの?」
リリスはたかをくくっている。力尽きた時こそとどめの時。リリスはそれをじっと待っている。
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン過去編#59 ミセス・ボニー・ガン(原題「フェニックス」)
※(2006年頃の作品)トンニャンシリーズで、コーラの出生の秘密に驚く私ですが、過去のこれらのお話が、後のお話と、ちゃんと繋がっていたのですね。
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※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024
次回トンニャン過去編#60 ミセス・ボニー・ガンへ続く
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前回トンニャン過去編#58 ミセス・ボニー・ガンはこちらから
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■トンニャン過去編#1最初から
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