トンニャン#6 悪魔皇太子リオール(クビドと対の天使)
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「リオールの巻」のような意味。話の位置は、アスタロト公爵の#10の直後のお話です。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
「なんで、真っ直ぐ帰らなかった?
だから、アスタロトに捕まってしまったんだぞ」
リオールは自分の城に向かいながら、またトンニャンに説教されていた。
空中では体を水平にした方が飛びやすい。
リオールは、トンニャン・アシュラと供に空間を移動している最中だ。
「おまえ、帰ったふりして、球体の外から、話を聞いていたのではあるまいな」
リオールは目を伏せたまま、ふてくされたような顔をしている。
「・・・図星か。全部、聞かれていたのか・・・」
アシュラはトンニャンとリオールの間で飛びながら、交互に二人の顔を見比べた。
「まぁまぁ、お二人さん。これからリオールの城に厄介になるわけだし、トンニャンも、少し遠慮しろよ」
【悪魔皇太子 リオール】
大魔王ルシファーとその妻・魔女裁判長リリスの長男として魔界に誕生し、生まれながらのルシファーの後継者として帝王学を学び成長する。
しかし、事実はリリスの血が一滴も入らない、ルシファー一人の子で、六枚の翼を持つ天使。
ルシファーと対の天使ミカエルの子、愛の天使クビドと対をなす事となる。
ルシファーの想い人であったコーラを、父から強引に奪い妻とした。
たくさんの妹弟達がいるが、リオールのすぐ下の妹、長女である悪魔皇女サーティは、いずれリリスの後を継いで魔女裁判長となる事が決まっている。
この物語の、数少ないオリジナルキャラクターの一人である。
「トンニャン、でもよくあのフェアリーとアスタロトの関係がわかったな」
アシュラは、いつもながらのトンニャンの洞察力に感心している。
「簡単な事だ。フェアリーが何の理由もなく悪魔なぞに付いて来るものか。あのフェアリー、リジュといったかな。
リジュは間違いなくアスタロトに惚れていた。それに、目の前の女に手を出さないなどと、アスタロトに限ってありえない」
「それで俺までひと役買わされたのか?」
「いいじゃないか、リオール。悪魔ではあるが、美しい恋人達だったぞ。
アスタロトがしばしの間でも幸福なら、これも魔界の安定につながる。
ルシファーに報告は出来ないが、本来ほめられて、しかるべきではないのか」
リオールはトンニャンの方をチラッと見ると、やはりふてくされた顔でアシュラに答えた。
「ほめられていい話なのに、さっきから俺はトンニャンに叱られてばかりだ」
「リオール」
トンニャンがふいにリオールの名を口にしたので、またリオールは身構えた。
「さっきの球体での話は、おまえの城に着いたら、ゆっくり話したい。
納得のいかない事もあるだろうが、ルシファーに問い詰める前に、わたしの話を聞いて欲しい。
その後、ルシファーと話すかどうかは、おまえしだいだ」
リオールは少し斜めを向いていたが、諦めたように頷いた。
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン#6 悪魔皇太子リオール(クビドと対の天使)
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