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元祖 巴の龍#9
大悟は腰をおろし菊葉の次の言葉を待った。
「あなたには二度も命を救われ、そして迷惑をかけてしまった。
あなたを信用しましょう。
わたしは新城の三つ口定継(みつくちさだつぐ)の城から逃げてきたのです」
三つ口定継。この名を聞いて大悟は身震いがした。何度となく丈之介に聞かされてきた名前だ。
「わたしの母は、かつて新城を治めていた涼原の姫君でした。
先のいくさで捕らえられ、三つ口定継の側室になりました。
その時すでに、母はわたしを身ごもっていたのです。
わたしを産むために母は屈辱の道を選びました。
しかし、生まれたわたしは男でした。
男であれば涼原の血を受け継ぐ者として殺されます。
母はわたしの命を救うために、女と偽って育てたのです。
ところがわたしも十三となり、いつまでも隠し切れなくなり・・・」
急に大悟が立ち上がり、近づいてきていきなり菊葉の手を取った。
「母は涼原の姫君と言ったな」
大悟は大きく目を見開いて確かめるように菊葉を見つめると、震える声で言った。
「母の名は桔梗(ききょう)。父は草薙丈之介(くさなぎじょうのすけ)というのではないか」
「なぜそれを」
「やはりそうであったか。俺も突然のことで混乱している。
なんと説明したら良いのやら。
つまりその・・・俺はおまえの兄・草薙大悟(くさなぎだいご)だ」
今度は菊葉が驚く番だった。
「兄上?しかし、母の話では兄は二人、丈丸(じょうまる)と梗丸(きょうまる)と聞いたが」
「それは幼名だ。俺は梗丸。大悟と名を変えたのはつい先ごろだ。
しかし俺に弟がいたとは。しかも、女として育てられ、母まで生きていようとは」
「で・・・では、ほんとうの兄上なのですね。そして昨夜の優しい御仁は父上」
ふれ合った手がいっそう強く握られた。
菊葉は不意に母の言葉を思い出し、懐の鍔を差し出した。
すると呼応するように大悟の太刀がカタカタと震えた。
「これは母が、父上から作ってもらった鍔と聞いております」
大悟は震える太刀を引き抜いた。
すると吸い付くように鍔が太刀と重なり、カランと音を立てて落ちた。
続く
ありがとうございましたm(__)m
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そして、またどこかの時代で
次回 元祖 巴の龍#10はこちらから
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