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カオル #16
「カオルさん。」
柚季に声をかけられて我に帰った。
「カオルさん、もしかしてホテルに来たの
初めてじゃないよね?」
「な・・・何行ってるんだ。んなわけないだろう。」
「だよね、そんなわけないよね。
まさかカオルさんが、そんなこと、
あるわけないよね。あ~よかった!」
柚季に言われて、カオルは咳払いした。
「馬鹿なこと言うなよ。
そ・・・それより、その・・・。」
カオル焦りながら、最初の質問を思い出した。
「何度も言うようだけど、大切なことだから。
その、たった一回きりの相手より、ずっといっしょにいられる
本当に好きな人に出会えるまで、
待っていた方がいいなじゃないかな。
まだ若いんだし、急ぐことないと思う。
それに・・・。」
カオルは言葉を選ぶように口を閉じ、
そして横を向いて、思いきって言った。
「俺は金髪ちゃんに、何の感情もないよ。
残酷なようだけど、本当にこれっきりだ。
もしかして、抱いた後に気が変わることを期待されても
迷惑なだけだから。」
カオルはそっと柚季の様子を盗み見た。
柚季は下を向いていたが、しばらくして顔をあげると
カオルに向かってニッコリ笑った。
「何度も言ったけど、ちゃんと自分で決めたことだから。」
万事休す。
万策尽きて、カオルはホテルのベッドに座ったまま
ずっと頭をかかえていた。
今、柚季はシャワーを浴びている。
出てきたら今度はカオルの番だ。
そして、次は・・・。
「無理だ・・・。」
カオルはつぶやいた。
このままここにいれば、結局は柚季を傷つけてしまう。
カオルは 顔を上げた。
ありがとうございました(/_;)
カオル#17へ続く
カオル#16
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