アスタロト公爵#3 阿修羅王
※この物語は 「阿修羅王編」の本編より 悪魔の三大実力者のひとり、アスタロト公爵の話を抜粋しています。特定の宗教とは 何の関係も無いフィクションです。
「アシュラ、まづいな。建物が倒れるぞ。」
トンニャンは、ついと飛び上がると窓に足をかけた。
「飛び出すぞ。」
「おい、待てよ!」
慌てて後を追うアシュラが窓の外に飛び出した時、
さっきまでいた部屋もろとも、建物が倒れていくのが見えた。
人々は歓声を上げ、血に染まった建物に火がかけられた。
「胸が悪くなるな。」
宙に浮いた状態で、アシュラとトンニャンは燃えている建物と、
その周りで小躍りして喜ぶ人間達を、冷ややかに見つめていた。
「さてと、どうしたものか。ねぐらが無くなってしまったな。」
「あ、クロワッサンとスクランブルエッグを食べてなかった。」
「せっかく作ってやったのに。
この次は一万年後くらいにしか、作ってやらないぞ。」
アシュラは、燃え尽きそうな建物を見ていた。
本当は食べる気になどならなかったのだ。
人の焼け焦げる様を見ながら、物が食べられる人間がいるだろうか。
いや、もちろんアシュラは人間ではない。
それ故、その思いをトンニャンに悟られたくなかった。
「地にもぐるぞ、アシュラ。」
「え?ルシファーの城か?」
「魔界は嫌か?」
「いや、ルシファーはいいんだが、リリスがな・・・」
リリスは大魔王ルシファーの妻にして、魔界の裁判長だ。
その嫉妬深さは折り紙付きだ。
「では、天上界にするか」
「じょ・・冗談は寄せ!鬼が、天帝の元に身を寄せられるものか」
「ミカエルやクビドのところでもいいぞ」
「とにかく、天上界はごめんだ。」
トンニャンは考えるように、首を左右に振っていたが、やがて地の一点を見つめた。
「やはり、魔界だな。」
トンニャンが突然急降下した。アシュラは、それにつられるように後を追った。
「リオールのところならいいだろう?」
地中に体が到達する頃、トンニャンがアシュラを見て笑った。
リオールか、ならまだいい。
リオールはルシファーとリリスの長男にして悪魔皇太子。
現在は妻である悪魔皇太子妃コーラと、ルシファーとは別の城に住んでいる。
「うわぁ~!!」
突然、網に捕らえられた虫のように、何者かに自由を奪われ、
アシュラはほんの数秒記憶を失った。
次の瞬間、透明な縄に縛られたアシュラとトンニャンは、床に転がされていた。
「いいざまだな。トンニャン」
硬いブーツの上を見上げると、
長い黒髪の女と見紛うほどの、美しい青年が立っていた。
ありがとうございましたm(__)m
アスタロト公爵#3 阿修羅王
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