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エンドレスヒール#35 -3.11

3月11日(金)深夜~3月12日(土)(震災2日目)

夫が会社に行ってしまって、頼りないロウソクの火で時計を見ると、すでに12時を回っている。
もう、地震から2日目。12日になったのか。
余震が続く中、夫が車のラジオで聞いた マグニチュード8.8.震度7以外、何の情報も無い。
本来、12時過ぎたのだから眠ったほうが良いのだが、不安もあってか、眠れない。

和美は、ノートに書いていた日記の続きを書き始めた。
11日に私に起こったこと。
感じたこと。
思ったこと。
書き残しておこう。

和美は、今日地震後に行ったこと、夫のことを書くと、こう結んだ。
「23時半
夫の会社の人が来て、仙台の中心部の会社に今から行くことになった。
私は、圏外の携帯、電気の無いまま、独りになった。
明日は仕事だが、実際どうだろう。
電話してからじゃないと行けないが、通じるだろうか。
まだ、親にも連絡が取れていない。
地震一日目、私は独りの夜を過ごす。」

時計は12日の午前2時。
和美はようやく2階に上がった。
明るいうちに段ボール三日分の服とスニーカーを、車に入れておいた。
今後の家の倒壊に備えてだ。

枕元にバッグ、持病の薬を置く。
バッグに一番大切なものを入れなければ、と思った時、和美はフロッピーとUSB(フラッシュメモリー)を入れた。
それは、他の人には何の価値もない、和美の書いた小説や詩を落としてあるものだ。

一番大事なものが、自分の作品とは。
人は笑うだろう。
小説家でも、詩人でも無い。ただの主婦のくせに。

ジャージを着たまま、いつでも逃げられるようにして、宮城県しか地震が起きていないと信じたまま、津波の被害も何も知らず、眠りに入った。

続く
2011年4月21日(木)

エンドレスヒール#35 -3.11

かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね

次回 エンドレスヒール#36 へ続く

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