エンドレスヒールⅡ-3.11 #7あさみの場合
(4月初め、3.11の時の話を聞く)
「外に出て、それから どうしたんですか?」
「荷物を中に置いたままの方もいらしたので、地震の落ち着くのを待って、ヘルメットをかぶって、お客様の荷物を取りに行ったの。」
「もう一度、館内に戻ったんですか?」
「そう、そして、ひとつひとつ確認しながら お客様に荷物をお返ししたの。」
「大変でしたね。もう一度、中に入るなんて。」
「その時は、ヘルメットかぶっているのが職員だけで・・・職員分しか無いんだけどね、・・・お客様に申し訳ない、という思いだったわ。」
「だって、館内に荷物を取りに戻ったんでしょ。ヘルメットは、お客様分、全部は揃えられないですよ。凄い、大変でしたね。」
「今、思うと、地震直後だからね。その時は夢中だったの。」
すごい・・・バイトなのに、なんという職業意識。
「水月さん、ここ違ってない?」
「え?順番ですか?」
「オイウエオが優先だから、次が数字よ。」
「あ・・・すみません。ありがとうございます。」
唯野は落ち着いていて、的確に間違いを指摘し、細かい所までキチンと浅海に教えてくれた。
「唯野さん、これ、ぜんぜん番号違うんですけど・・・。」
「地震で、飛んで来たのかしら?隣の書棚とも限らないわね。とりあえず、ブックトラックに入れておいて。」
唯野と浅海は、ぐじゃぐじゃになっていて順番がバラバラの書棚を、時間をかけて少しずつ、整理して行った。
一つ目の書棚が終わると、その裏に背を向けて並んでいる書棚に移った。
そこが、前の書棚に増して乱れていて、番号を見ると前の書棚の物もあった。
「これ、前の書棚のよね。こんなにあるんじゃ、本を移動しなくちゃ入らないわ。」
唯野と浅海は、前の書棚を一段一段、少しずつ移動して、新しく見つけた その間に入る本を入れるスペースを開けてゆく。
けっこう、重労働だな。
「スクワット、してるみたいですね。」
「ほんとね。立ったり座ったり、上下左右に移動しなくちゃならないから。なかなか進まないわね。」
2011年6月7日(火)
続く
エンドレスヒールⅡ-3.11 #7あさみの場合
かあさん、僕が帰らなくてもも無かったかのように生きていってね
次回 エンドレスヒールⅡ #8はこちらから
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