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元祖 巴の龍#85
「おまえたち、この巴の龍をなんと心得る。この龍はこのわしが、与えたものぞ」
三人の心に衝撃が走った。
「定継は、最初のいくさで新城を奪う時に、桔梗の勇姿に一目ぼれしたのだ。丈之介と逃げる桔梗をなかなか見つけられず、焦っておった。
その時わしが力を貸してやったのじゃ。桔梗の体に三つ首の龍を住まわせ、その龍は巴の龍として生まれ落ちた」
三人は電流が走ったように動けない。
「おまえたちの巴の龍は、邪悪な龍ゆえ、新城をあきらめきれない洸綱を呼び寄せた。そして、まんまと桔梗をまた戦場に駆り出したのじゃ」
「うそだ!では俺たちは、おまえに作られた者だというのか」
大悟が叫んだ。
「そうじゃ。定継も桔梗も、わしがおまえたちをこの世に送り出したとは、最後までわからなかったようじゃが」
そうして龍王は両手を広げて、三人に差し出した。
「さあ息子たちよ。わか身に帰れ。共にこの世を支配しようぞ」
太刀を持つ菊之介と兵衛の腕がだらりと下がった。大悟も弓と矢を持ったまま、立ち尽くした。三人の巴の龍はまだ光を放ったまま、目はうつろになり龍王に向かって歩いていく。
その時、菊之介の耳に桐紗の声が聞こえた。
「菊之介、行ってはなりませぬ。目覚めるのです、菊之介」
菊之介の目がぴくりと動いた。
「桔梗様の太刀を取るのです。菊之介、桔梗様の太刀を取りなさい」
桐紗の声に導かれるように、菊之介は太刀を抜いた。すると、桔梗の太刀は鋭く光り、その光で菊之介は正気に返った。
「兵衛兄上!大悟兄上!行ってはなりませぬ。戦うのです」
龍王は驚いて菊之介を見た。
「なんと、わしの力で生まれたものを、何故じゃ」
龍王が兄二人に顎をしゃくって合図を送ると、大悟は菊之介に向かって弓をつがえ、兵衛は太刀を抜いて向かってきた。
「兄上、正気に戻ってください。兄上!」
続く
ありがとうございましたm(__)m
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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