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アスタロト公爵#4 阿修羅王

※この物語は 「阿修羅王」本編より 悪魔の三大実力者のひとり、アスタロト公爵の作品を抜粋しています。特定の宗教とは 何の関係も無いフィクションです。

「いい様だな。トンニャン。」
硬いブーツの上を見上げると、長い黒髪の女と見紛うほどの、美しい青年が立っていた。
「アスタロト、ずいぶん乱暴な歓迎だな。」
アスタロトはつんとして、手に持つ鞭を鳴らした。
アスタロトの後ろから光がもれて、薄い蜻蛉の羽を持つフェアリーが現れた。

「フェアリー(妖精)か、なるほどな。悪魔には見えないシールドを張っていたのに、おかしいと思った。
アスタロトに騙されて連れてこられたのか?」

アスタロトはもう一度鞭を鳴らすと、フェアリーに顎で命令をした。
「いいのですか?アスタロト様。」
フェアリーは確かめるようにアスタロトの顔色を見ると、トンニャンとアシュラの透明な縄をほどいた。

二人は立ち上がると、こわばった腕を伸ばすようにもみほぐした。
「何が目的だ、アスタロト。」
アスタロトは答えず、またフェアリーに命じた。
「トンニャンとアシュラを部屋に案内しろ。丁重にな。」

二人が言われるままにフェアリーに付いて行こうとすると、その後ろ姿に向かって、言葉が刺さった。
「言い忘れたが、そのフェアリーは勝手について来た。
いつだったか、人間界に行った時にな。魔界の者が見えない物が見え、出来ない事が出来るから重宝している。
コレクションの一つとしては、いい趣味だろう?」
アスタロトの笑いがトンニャンとアシュラの背中に響いた。

「けっこういい部屋だな。マリー・アントワネットの部屋に匹敵しないか?」
トンニャンとアシュラの通された部屋は、ロココ調に彩られた、広く美しい部屋だった。

「おい、羽根布団だ。
屋根付き、レース・フリル付き。しかもダブルベッド。」
アシュラは羽根布団の上で、トランポリンに乗ったように飛びまわっている。
まるで、少女のような喜びようだ。

「何重にもシールドが張られているな。
これではルシファーも、リオールも、簡単にわたし達を見つけられないだろう。」
羽根布団から飛び上がったアシュラが、トンニャンに飛びついた。
「少しの間なら悪くないんじゃないか。
前の部屋とは比べ物にならないくらい豪華だぞ。」

トンニャンは天井を見つめている。
「覗かれててもか?」
アシュラはトンニャンから飛びのいた。
「見てるのか、アスタロトは。」
「当然だろう。目的はわからんが、監視されているのは間違いない。」

トンニャンは、アシュラに顔を近づけた。
「見られててもいいなら、相手をしてやってもいいぞ。」
アシュラは赤面していくのを感じた。
「馬鹿を言うな。そんな趣味はない。」
トンニャンがにやりと笑うと、アシュラの周りの風景が大きく歪んだ。


ここはどこだろう。いつか見た風景。そうだ、俺は帝釈天と戦っていたのだ。姫を救いに行かなければならない。丘の向こうで、部下達が、俺の命令を待っている。行かなければ。

アシュラが飛び立とうとすると、足元に水を感じた。ひたひたと湧き上がる泉のほとりに、アシュラは立っていたのだ。濡れた足元に目を落とすと、揺れる泉の水面に白い人の姿があった。顔を上げたアシュラは、その目を疑った。

「姫・・・か?」
白い薄絹の衣装をまとい、濡れた黒髪の少女が立っていた。少女は、アシュラの声に気づいて、ゆっくりとこちらを振り返った。

アシュラは走り出した。走って姫の間近に身を置くと、震える指で、その黒髪にふれた。

ありがとうございましたm(__)m

アスタロト公爵#4 阿修羅王

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#5へ続く
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アスタロト公爵#1最初からhttps://note.com/mizukiasuka/n/n86d65d981a73

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