元祖 巴の龍#82(地図付)
「義姉上は美しい。醜くなんかない。わたしは義姉上がなんであろうと、愛しています」
菊之介は、初めて自分の言葉で桐紗に本心を伝えた。
「嬉しい・・・。菊之介、お願い、最後に名前で・・・」
桐紗がそうつぶやいた時、桐紗の体が薄くなってきた。
「桐・・・」
言い終わる前に、桐紗は菊之介の抱きしめた腕の中で、消えていった。
「ふははは・・・。消えおったか。桐紗も桔梗も、愚かな女子じゃ。
この国はもう駄目じゃ。これから天変地異が起こるぞ。すべてがきえゆくのじゃ」
定継の龍が笑いながら言った。
兵衛も大悟も立ち上がった。菊之介は振り返りながら定継をにらんだ。その目は涙で濡れていた。
「何じゃ、その目は。わしを倒したいか。ならば龍王(ロンワン)に来るがよい。
そこで巴の龍の息の根を止めてくれよう。ふははは・・・」
定継の龍は、そう言うと昇竜となって天に昇って行った。
「ロンワンとは・・・」
大悟がつぶやいた。
「蛇骨(だこつ)から船で行く小さな島「龍王」と書き、昔から龍が住んでいるという」
菊之介が答えた。
「龍王(ロンワン)か…」
兵衛が遠い空を仰ぐように見つめた。
定継が昇竜となって消えた後、三つ口の城は音を立てて崩れ、菊之介たちは命からがら城から脱出した。
母・桔梗が飲み込まれた今、彼らの次の目的は、龍王(ロンワン)にほかならなかった。
三人は体制を立て直す間もなく、龍王の島へ行ける船を捜した。まもなく大悟は一艘の小船を借りた。
漁師たちは、龍王と聞いただけで、皆一様に首を振ったが、船だけを借りるということで、話をつけた。
「大悟、船を操った経験は?」
兵衛が聞いた。大悟は首を振り、菊之介も同じく首を振った。
「そうか、ではわたしが漕いでいこう。
来良(ライラ)にいる時、海が近かったので義父上や妻とよく舟に乗ったことがある。
私も葵も、船は何度も漕いだことがあるから、何とか行けるだろう」
続く
ありがとうございましたm(__)m
地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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