こどものゆめ
高校演劇部時代の友人、カンちゃん。
カンちゃんのアパートに、当時の仲間が集まっている。
カンちゃんの部屋は角部屋で、そこだけ廊下が無くて、部屋の入口がある。
つまり、他の部屋より廊下の分だけ、カンちゃんの部屋は若干広い。
久しぶりに集まった仲間。それぞれ家庭を持ち、まだ小さい子供を持つ者もいるが、今日は大丈夫なのだろうか。
「よく、このアパート残っていたね」
「俺が出た後、別の人が入ったらしいけど、ちょうど空いてたんだ」
カンちゃんは、離婚したばかり。
そういえば、カンちゃんの名前、なんていったっけ?
カン沢?カン田?カン吉?カン介?
セイ子も来ればよかったのに。忙しいのかな。
セイ子は高校演劇部時代の友人。彼女も離婚して一人だが、実家でマンション暮らし。
親のめんどうをみていると聞いた。
カンちゃんの部屋を一足先に出て、セイ子の家に向かう。
マンションから出てきたのは、一級先輩のスイちゃん。
どうも家を間違えたらしい。誤魔化さなければ・・・。
「カンちゃんちに高校演劇仲間が集まってね。前のアパートだから、行ってみたら?」
スイちゃんは喜んで出かけて行った。
町を歩くと、道路の周りを囲むように人が一列に並んでいる。
女の子が母親に叱られる声が聞こえる。
もう、家に帰りたい。帰ろう。
帰ろうとしてマンションに戻ると、何故か、元夫がいた。
いや、今の私の家はここではない。
ここは離婚した夫のマンションだった。
別れた理由は、そう、よくある夫の浮気。
元夫は、私が帰ってきたと喜んでいる。私は間違ったとも言えず、とりあえず寄ったふりをして、部屋に入る。
子供が6人いる。
昔の喫茶店の制服のような、黒いワンピに白いエプロンのメイド服の、若いお手伝いの女性が、子供のめんどうを見ている。
「私の子は、どの子?」
お手伝いの女性は答える。
「長男と次男のエディ、3番目が女の子で、4番目の男の子までが、奥様のお子さんです。
下の二人の男の子と女の子は、ほかの方のお子さんで・・・」
元夫は、浮気相手の子供だけ引き取ったのか。
それにしても、私の子は4人で、女の子も生んだのか。
子供は小学生を頭に、まだ幼い子もいる。
誰も私を覚えてないのか、近くに寄って来ない。
私は、自分の家が思い出せない。でも、ここは私の家ではない。
帰らなければ。
元夫のマンションを出る。
私はどこに行くのだろう。
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