Love's night #10
「すみません。送ってもらっちゃって」
勢(せい)は少し照れながら頭をかいた。
「こちらこそ、更冴(さらさ)が無理に上がってもらったのに、かえって迷惑かけてしまって。
こんな遅くに大事なお嬢さんを駅まで送るくらい、あたりまえです」
「やだわ。お嬢さんだなんて」
タカネも恥ずかしそうにうつむいた。
部屋に入ったものの、更冴に夕食を食べさせなくてはならなかった。
いつものように勢が何か作ろうとしたが、タカネが台所に立つと言い出し、
意外にもあり合わせで作ってくれたのだ。
その後 更冴を寝かしつけてから帰ることになったので、
かなり遅くなってしまった。
「でも、タカネ先生料理上手ですね。人の作ったもの食べたの何年ぶりかな」
「母が早くに亡くなったので・・・。自然と」
勢は少しあわてた。
「すみません。余計なこと」
「いえ、だから更冴ちゃんの気持ちわかるんです。
私の母は、私が更冴ちゃんより大きくなってから亡くなったから、記憶はあるんです。
でも 更冴ちゃんは記憶もないでしょう。
だから、他の先生や私なんかが、ママとダブるんじゃないかしら。
私、更冴ちゃんのママになりたくて・・」
そこまで言って 、タカネは自分の言葉に頬を染めた。
「・・・ち・・・違います。その、その、違う意味で・・・」
「や・・・わかってますよ。あの、誤解してませんから」
勢もうろたえながら答えた。
駅が見えてきた。
勢は改めて今日のお礼とお詫びを口にした。
タカネは首を振ると、少し走り
「ありがとう。また、行ってもいいですか?」
と 手を振りながら言った。
勢は口にすることをさけ、ただ微笑みながら 手を振り返した。
ありがとうございましたm(__)m
Love's night #10
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かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
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#11へ続く
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