元祖 巴の龍#10(相関図付)
「この太刀は母が使っていた物らしい。
親父が俺を連れて逃げる途中で、柄・太刀・鍔がバラバラになったこの太刀を見つけた。
柄と鍔は見つからなかったが、かろうじて莢のみ見つけて太刀を収め、持ってきたのだ。
源じいに打ちなおしてもらい、今は俺の太刀となった」
「では、この鍔は兄上の太刀についていた物なのですね」
「おそらくは」
大悟は自分の太刀を取り、菊葉の鍔も拾った。
「これで我らが兄弟であるのは間違いない。
おまえは男ということがわかってしまい、三つ口定継に追われていたのか」
大悟は菊葉に鍔を渡した。
「もう隠すことはない。そうだ、いつまでも菊葉でもあるまい。
名を改めてはどうだろう」
菊葉は少し考えてから、つぶやくように言った。
「菊葉・・・母につけてもらったこの名前。父の名は丈之介・・・」
菊葉は顔を上げた。
「菊・・・菊之介というのはどうでしょう。父・丈之介からと、母がつけた菊葉から。
これからは菊之介と名乗りとうございます」
***************
「兄上、お願いでございます。命ばかりはお助けを」
菊之介に頭を下げられて、大悟はまたか、というようにため息をついた。
菊葉は菊之介と名を改め、再会した兄・大悟と北燕山の北西の村・サライに向かっていた。
とりあえず少しでも遠くへということしか、今の二人には考えられなかった。
山育ちの大悟は狩りの名手で、飲み食いするものには困らなかった。
また、狼など獣に襲われる時も、冷静に対処し菊之介を危ない目には合わせなかった。
毎日のように太刀捌きの稽古もし、菊之介も弟らしくなってきたのだが、菊之介には困ったことが一つあった。
それは情に厚すぎて、獲物を殺すことができないのだ。
大悟が獲ってきて、焼いて食べる分には問題ないが、自分は獲ることができない。
襲ってきた獣は振り払うがそれ以上は。
「今度は聞けぬぞ。菊之介、そこをどくのだ」
続く
ありがとうございましたm(__)m
※相関図、写真が下手で、曲がってて、すみません。2001年作成。
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そして、またどこかの時代で
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